「贈与経済」と「無償の労働」

「贈与経済」と「無償の労働」

フリーモデルは「無料」を提供し、そこから儲けを生み出す新たなマーケティング手法です。

しかし、今回ご紹介するフリー戦略、4つ目のモデル「非貨幣市場」は、その名の通り、貨幣つまりお金を生み出さない仕組みをいいます。

しかし、実は、この「非貨幣市場」という概念は、これまでご紹介した「直接的内部補助」「三者間市場」「フリーミアム」のような巧みなシステムではなく、それを支える根底となるもの。

いうなれば、「真の無料」ともいえる大切な事です。

少しややこしくなるかもしれませんが、「無料=タダ」ではなく、「無料=無償=プレゼント」という見方をすれば、理解しやすくなるかもしれません。

執筆者イラスト
基さん

今回は、「非貨幣市場」とは何か?を知る前に、「贈与経済」という概念について先に説明させていただきます。

「貨幣経済」とライスワーク

人は社会性の資質として、他者との関わりは「喜び」です。

それは、単なる自己満足ではなく、他の人にも役立つ「価値を提供できた」という証だからです。

こうした他人との関わりや喜びを、別の視点から言い換えてみよう。

当然ながら、「消費」だけで経済、社会は成立しません。 誰かが自分の時間を「消費」することによって、企業は商品やサービスを「生産」する。

生産と消費の交換を繰り返しながら、お金(=貨幣)を媒介として世の中は循環していいます。

このように、お金を媒介として価値の等価交換を行う経済を「貨幣経済」という。

会社に勤めに出て働くことは、貨幣経済システムの中で製品やサービスを作って売り、得た利益を「給料」としてもらうこと。

当たり前のことですが、貨幣の循環によって、「ライスワーク」(食べるための仕事)は動く。

人間、食べていくためには働かなくてはいけないのは当然。  働いて何かしらの金銭的報酬をもらい、生活をする。 このように自分が働くこととお金を等価交換することを前提に執り行われる活動「ライスワーク」という。

ただし、淡々とお金を稼ぐだけが「ライスワーク」ではないことは誰もがきづいている。

人間は「感情」を持つ生き物。 ライフワークの領域は貨幣のロジックだけでは動きません。 働くことによって、大いなる「やりがい」を得ることができますし、その先には働くことでしか得られない「自己実現」もある。

「贈与経済」とライフワーク

ここでは貨幣とともに、コトを動かす原動力として機能するのものがある。

それは「贈与」(=プレゼント)

人とのコミュニティの中では、「あの人にはお世話になっているから、この頂き物をおすそ分けしよう」とか「お中元やお歳暮を贈ろう」とか、「お金では支払えないけれど、助けてあげたいからボランティア活動でお手伝いしよう」などさまざまな形をした「プレゼント」が行き交っています。

あなたも、もちろん私もその経験は必ずある。

コミュニティ内における、お金(=貨幣)に換算できない人間の活動やモノなどを交換する経済を「贈与経済」と呼びます。

「贈与経済」とは、モノと貨幣を等価交換するのではなく、とにかく人に「プレゼント」をすることが先だという経済システムです。贈り物をすればするほど人は、人から何かをしてもらったら、お返しをしないと申し訳ない感情が働く「返報性の原理」と呼ばれる心理現象が働くからです。

ただ、勘違いしてはいけないのは、「贈与経済」におけるプレゼントとは、その見返りとして報酬を求めない、無償の市場をいいます。

先に説明した「貨幣経済」とは異なり、「贈与経済」では無償を基本とします。

たとえば、平成時代を振り返る中、災害に見舞われた経験から、共に生き、共に分かち合う絆は私達の記憶に深く残りました。

そこには、報酬を約束された、「ライスワーク」(食べるための仕事)の姿はなく、「ライフワーク」(生きるための仕事)があった。

時間給や出来高、利益という概念は微塵もなく、無償の労働による「贈与」(=プレゼント)であり、実はそこに私達の追い求める「ライフワーク」が根底にある。

決してライスワークを否定するつもりはありません。 少なくとも私達の生活は「ライスワーク」(食べるための仕事)を基盤として成り立っていることは確かであり、貨幣経済の進展によって享受できた「ベネフィット」も数えきれないことは事実だ。

ただ、ライスワークを主体とする貨幣経済はいかようにも「競争」を生み出します。 争いではなく、競い合うことで、経済は回り始め、私たちに豊かな暮らしを支え続けてきた。

しかし、競争(きょうそう)だけでなく、響想(きょうそう)の世界も視野に入れる必要があるのではないか?

幸いなことに、21世紀になって発展したSNS(ソーシャルメディア)によって「ライフワーク」のアウトプットが出しやすく、また「注目」されやすくなったといえる。

たとえ規模としてはささやかながらも、一人一人の個人が支える「贈与」(=プレゼント)経済が世界中に形成されつつある。 こうした贈与経済の自然発生とつながりに、個人が未来を開拓するフロンティア(=未開拓の新世界)があるにちがいない。

創造することや、感謝し感謝されることへのハードルは確実に下がり続け、誰もが贈与経済の担い手になれる時代だ。

贈与経済は、金銭的対価を期待せず、何者かを差し出すが、「注目」「評判」「関心」といった金銭でない「影響力」を生み出します。

贈与経済をささえる「無償の労働」は、無料の「モノ」を手に入れる代わりに、人にインセンティブを支えます。

「非貨幣経済」とは、どういう仕組みなのか?真の無料とは何か?

次回、続けてお送りしましょう。