「保証期間」中、買い手に起こる “ 変化 ”

「保証期間」中、買い手に起こる “ 変化 ”

「商品到着後30日間使って満足いただけなかった場合、 商品代金を全額返金いたします 。」

商品を実際に使用してみて効果が現れなかったり、商品に満足できなかった場合に利用できるサービス。

“ 全額返金保証 ”

まだ使った事がない、どれだけの効果があるかわからない商品は、価格に見合った物なのかどうかという不安が募る。

そんな時に、「全額返金できる」(送料は自己負担? まぁそのくらいならOKだ)となると、購入リスクはグンと下がり、損はしないだろうという「安心感」を感じます。

それに、全額返金保証してもいいぜって言われるとなんだか「商品に自信を持っているなコイツ」って印象をなぜか感じ、不思議と「効果がありそう」というイメージを受けませんか?

誰だって商品を買う時に、満足できない場合、全額返金してもらえると思うと、ついその商品を申し込みたくなるものです。

このとき消費者は、「無料で試せるんだから損はしない」という心理があります。

つまり、頭から返金してもらう事を前提としており、ほぼサンプル品の感覚で試してみようとする。ということらしい。

何となくその気持ち、わかります。

一方、全額返金保証で売り手側に「儲け」はあるのか?

じつは、全額返金保証には、人間の心理をうまく利用した儲けのカラクリが存在する。

手放しなくない「授かり効果」

通常、新製品のプロモーションや新規顧客の初回お試しサンプルとして、期間設けられ、終了後満足できなかった際、所定の手続きを行うと購入した代金の全額を返金してもらえシステム。

「とりあえず試してもらう」事で、顧客のレスポンス効果を高める目的としている。

では実際に返金を求めてくるお客様は、どれくらいの割合でいるのでしょうか?

返金の請求をするお客様は、なんと約5%未満だとされる。

意外に思えますが、統計上、返金を請求される人は全体の5%に満たない、100人中、5人以下しか「代金かえして」っていってこないのである。

残りの約95名の使用者様は、購入の手続きをされるという。

お試し期間中、使用者様の中で何が起きたのか?

考えられるのは、「実際使ってみて本当に気に入ったから」、というのも勿論ある。

だが、使用する前と後では、使い手の商品に対する思いや価値に変化が起きている。

使用する前の商品の価値を「1」だとすると、使用した後のその商品の価値は「2」になるとされている。

つまり、自分のモノになった時点で、それに対する価値は2倍に。

なぜか?

ここには「保有効果」という人間の心理が働いています。

人は、自分が保有したモノに対して突然価値が上がり、手放したくないという強い思いを抱くようになる。

もったいない、なかなかモノが捨てられない、長年使用した愛着あるものはどうしても手放すことができないという経験は誰しもあるはず。

この手放すことに抵抗、恐怖心が働く心理現象を行動経済学で、「保有効果」または、「授かり効果」といいます。

次の行動経済学者のダニエル・カーネマンが保有効果に関する実験をみてみよう。

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被験者の学生をランダムに、AグループとBグループに分けて、Aグループには大学のロゴ入りのマグカップをプレゼントします。

プレゼントをしたあとに、Aグループには「いくらなら、Bグループにそのマグカップを売るか」と質問します。

続いてBグループにも「いくらなら、Aグループからマグカップを買うか」と質問します。

通常、マグカップは6ドルで販売されていますが、結果は平均すると次のようになりました。

・Aグループ: 7.12ドルで売る

・Bグループ: 2.87ドルで売る

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たった今手に入れたものなのに、手に入れていない時と比較して、その価値は2倍になっていることが分かる。

保有効果が働く根底には、一度自分が保有したものを手放すという損失を避ける、利益よりも損失を大きく感じてしまう「損失回避性」が働くとされる。

また、「現状維持バイアス」といって、人は大きな変化や未知なモノを避けて現状を維持したくなる心理も働くとされる。

返金保証期間に買い手は、もう自分のモノだ。手放したくないという変化が起こる。

一度手にしたモノは倍の価値を感じてしまうというのは不思議なものですね。

商品というのは同じようなモノがたくさんあります。その中でいかにして自社の商品を「実際に使ってもらえるか」が重要なのがわかります。

クーポンの保有効果

クーポンとは切り離して使うことができるような、無料おためし券や割引券、サービス券のことですね。

チラシなどに付ける場合や、複数枚綴りで作って1枚ずつ切り取って使うもの、切り離さず1枚のものなどがあります。

クーポンは新規客開拓にも、既存客に再来店してもらうためにも活用でき、期間限定で使えるお得なクーポンを街頭などで配布すれば、それを使って試しにお店を利用してみようかなという人を集められるでしょう。

あるいは、来店したお客様にクーポンを渡せば、次も来ようという動機やキッカケを与えることができます。

クーポンとは、言ってみれば単純に商品またはサービスの「割引」です。

「クーポンが使えます」「割引します」この違い、わかりますか?

例えば、10,000万円の品を2割引きの8,000円で販売したとしよう。

一度これをしてしまうとその後値上げするのは難しい。つまり、通常の割引は「値崩れ」になる可能性がある。

一旦安い価格を提示された商品をそれ以上の価格で購入するお客様はなかなかいません。

それに対し、クーポンは、期間を定めてそのクーポンを持っている人だけ割引することができる。

つまり、クーポンは

・値崩れ感を見せない

・期間、割引対象者限定である

・クーポンで割引対象者に特別なお得感を感じさせる

というクーポンならではの特典があるのです。

つまり、「自分だけのクーポンで、お得に買い物できる特権を失いたくない」という気持ちが働く。

「クーポンが発行されました」
  ↓
「あなただけの割引特典が与えられました」

一度自分のモノになると、それを手放すときには、手に入れたとき以上の価値をつけるという「保有効果」の心理がここでもちゃんと生かされているのです。