有言実行の陥りる「罠」・不言実行の「底力」

有言実行の陥りる「罠」・不言実行の「底力」

自らが行動する前に、何かを宣言し、それを実行してみせる「有言実行」というスタイルは、華があるものです。

「オレはやるぜ!」っていう宣言を掲げ、見事に達成している姿に憧れを抱く人も、尊敬の眼差しを向ける人も少なくない。

あなたは、「有言実行」とは、どのような考え方、行動だと考えているだろうか。

読んで字のごとく、有言とは何かを言葉にして発言することで、そのことを実行するというのが、基本的な考え方になります。仕事においては、美学として捉えている人も少なくありません。

人は弱い生き物です。ちょっと油断すると怠けてしまう生き物だからこそ、あえて他の誰かに「やります」と発言し、自分にプレッシャーを設け、逃げ場を遮断させる効果が「有言実行」の利点。

さらに、宣言された人から協力を得やすいというメリットもあり、あなたがめげそうになったときの補佐役として力を貸してもらえることもあります。

だが、そんな有言実行にも、何を有言するかによって、宣言した本人に与える影響は違ってくるのです。

結論から先にいうと、「やめたい事」を有言すると実行されやすいが、「やりたいこと」を有言すると、かえって実行されにくい。

有言実行は、「今日からやめます宣言」には有効だが、「今日からやります、目指します宣言」には不利になる可能性が高い。ということなのだ。

どういうことでしょうか?理解に困っているでしょうから、これから説明していきますね。

有言実行は「禁止事項」には効果がある

「今日から禁煙します」

「ダイエットのため午後9時以降は何も食べません」

こう言った「やめます宣言」は、「禁止事項を有言実行」することです。

何かをしてはいけない、手をつけてはいけない、ついついやってしまう前にストップをかけられるかどうかが決め手となるわけです。

そんなとき、「もうしません、絶対に」と誰かに有言しておけば、その人からの監視が強化され、「人から言われてしまう」というプレッシャーがかかり、禁断の果実を手にする油断を回避させる効果があります。

仮にあなたが、やらないと誓った事をやってしまった時、宣言された人が、厳しく「注意」ができるわけです。あなた自身も、注意されたことに不満を感じることは一切なく、むしろありがたい忠告として受け取ます。

つまり、「周囲からの協力を得られる」点において、「もうしません」などの有言は実行されやすいといえる。

「これからやります」を有言した時の陥るワナ

だが、目標や夢に関して言えば、「これから始めます」「がんばって続けてまいります」という「やります・目指します宣言」であって、やってはいけない禁止事項は特になくて、新たに加える行為の有言による宣言です。

その目標や夢に向かって、今からあらゆる困難を乗り越えていかなければならない。

その困難を乗り越えるため、自らハッパをかけると同時に、他の誰かに有言宣言し、人から監視されているというプレッシャー効果により、逃げ場を遮断しようとするわけです。

だが、実際は、このような「これから始めます」を誰かに有言しておいたとしても、その人から「それは素晴らしい」「ぜひ頑張って必ず実現させてください」などと褒めてもらえることはある。

励ましのエールをしてくれることはあっても、それをやってもやらなくても、宣言されたその人が「やってないときの、あなたの行動を監視しようとはしないし、そんなつもりは全くない」のだ。

それどころか、「あんまり無理すんなよ」とか、「できることからやろう」など、周囲からの監視力による効果が非常に低い。

つまりは、「これから始めます」と有言し宣言しても、「人から言われてしまう」というプレッシャーがかけにくいのです。

逃げ場を遮断したつもりが、その「柵」は思った以上に低く、いつでも逃げだせる状態にある。

それに、宣言された相手にしてみれば、昨日までのあなたに何の問題もないわけだし、あなたがこれから始めようとすることを、「しない場合」であっても、何の問題もないわけですから。

さらにやっかいなことがある。

先に次の動画をみてもらえるとわかりやすいかもしれないので、時間があればご覧ください。

動画を飛ばして本文の続きから読んでも大丈夫です。(後からゆっくり動画をご覧ください)

次の動画は、ミュージシャン、そして音楽ビジネスで成功した起業家のデレク・シヴァーズがTED(スーパー・プレゼンテーション)で、テーマは「目標は人には言わずにおこう」です。

Derek Sivers: デレク・シヴァーズ 「目標は人に言わずにおこう」

夢が実現されたかのような「代償行為」の心理

夢や目標を「これからやります」と大々的に有言し、宣伝すると、本当の夢の実現、目標の達成には逆効果であることが、心理学でも実証されているというのだ。

目標や夢を人に話すと、その人から「それは素晴らしい」「頑張って必ず実現させてください」「応援するから」など、褒めてもらったりするでしょう。

そうすると、気分良くなって、やる気満々になるでしょう。褒めてもらえると、普通はモチベーション上がりますから。

褒めてもらえた自分は、まるでリスペクト(尊敬)されたかのような錯覚に陥り、あたかも既に、「目標や夢を実現したかのような錯覚になる」といいます。

当然ですが、有言したその時の自分はまだ、目標や夢は実現してはいない。だが、あたかも夢が実現したかのように錯覚する。

そうすると、夢に向かって困難に立ち向かうモチベーションが下がってしまう。

1926年、社会心理学者のクルト・レヴィンは、このようなすでに夢が実現したかのような錯覚になる心理を「代償行為」と呼び、

さらに、1936年ヴェラマーラーは他の人に認められると心は現実のように感じてしまうことを発表した。

2009年には実際に実験が行われました。

被験者を、一方は「目標を人に話す」、「もう一方は話さない」という2つのグループに分けます。

そうすると、その目標に向かって実際に努力したのは、話さなかった方のグループで、人に話すグループは早々とリタイアしてしまったそうです。

しかしながらリタイアした人に話を聞くと「だいぶ夢に近づいた気がする」と答えるそうです。

つまり客観的にはまだ目標は達成できていない、夢はかなっていないのに、「代償行為」によって心が満足してしまったので、それ以上努力することをやめてしまったのです。

目標や夢を有言し、誰かに宣言すると、他者から褒められる。「これから頑張ろうとしているあなた」の姿を褒めたり尊敬したりいるのであって、夢を実現させた姿をリスペクトしているわけではない。

にもかからわず、心が「目標はすでに達成した」「夢がかなった」と錯覚していい気分になってしまうがために、行動をしなくなって、結局夢や目標から遠ざかってしまうということです。

有言実行が、有言不実行になってしまっては本末転倒というもの。

誰もがこのようなパターンに陥るとは思えませんが、もし、あなたが何事にも「有言実行」スタイルになってしまっているのなら、このような「代償行為」の心理の罠にはまらないように気を付けてほしい。

有言で宣言し、他の誰かから、ちやほやされているなと感じたら、「ありがとうございます」とお礼はするも、心の中では「惑わされないぞ」というくらいの気持ちでいて、目標や夢に向かって、やるべきことに意識を傾けるようにしよう。

そして、有言実行は、「やめます宣言」には有効だが、「やります・目指します宣言」には不利になる可能性が高い。ということも頭の片隅に置いておきましょう。

「不言実行」のメリットデメリット

日本人は、目立つことを嫌う傾向が強いと言われています。

自己アピールという面においては、控えめな人が多いというのは事実かもしれません。

多くを語るより、言葉でアピールするよりも、「行動」で結果で示すというタイプが多い傾向にあり、宣言したり、発言したりはしないが、しっかりと「実行」する、これが「不言実行」ということになります。

目立つことをためらう日本人は、やはり「不言実行」タイプが多く、こだわりを持つ人も少なくはないでしょう。

近年では、スポーツ選手や、各界の著名人を中心に「有言実行」タイプや、ビッグマウスと呼ばれるようなタイプの人も増えてきている。

仕事においても、黙っていては分からない、自分を売り込むことは重要だ、アピールしなくては評価されない。

などといったいいたい事ははっきり口にしろ、やりたいことがあるなら、ガンガン発言し、自分に「根拠のない自信」を植え付けろ、という変化が出てきているのも事実です。

しかし、言う(有言)のは簡単であるが、実際に行う(実行)のはなかなか難しいもの。

不言実行タイプの人は、ある種「性格」の問題というのも一つの理由かもしれません。

言葉によるアピールに意味を感じていないということも、大きな理由の一つと言えます。

結果を出せばよい、口先だけでは意味がない、たいしたこともないのに大げさな言葉によるアピールにというのは、時として「誇張」され、他者に過剰に受け取られることがある。

そして、発言しないというのは、自ら実行するタイミングを選ぶことが可能です。不言実行は、自分の中だけにとどめることであって、いつどこで実行しようが、そのタイミングを自由に設けることができる。

しかし、周囲の協力を得られにくいというデメリットもある。いつも黙々とだまったまま、一人で何でもこなす姿は、あの人は自分でやってしまえる、という「個人プレーヤー」と認識され、誰も手助けをしようとは思わない、むしろ、手助けをしては失礼だ、と思われることさえある。

そう考えると、やはり「有言実行」の方がメリットはあるのだろうか?

成功者はみな「不言・即実行」

先ほど、有言実行は、「やめます宣言」には有効だが、「やります・目指します宣言」には不利になる可能性が高い。という説明をしました。

そう、目標や夢の実現は、有言よりも、不言の方が、実行されやすいといえるのです。

世の中の成功者たちは、ほとんどが「不言実行」であることを、知っているだろうか。

成功者は、とにかく黙って素早く行動する。それは誰かにバレない行動するのではなく、「言葉にする間もないくらい、行動が早い」ということです。

不言実行、というより、「不言・即実行」。

いやまてと。知る限りでは成功している人や各界の著名人は、まちがいなく「有言実行」タイプが多いはず。

と、思われるだろうが、僕たちの思っている有言実行と、彼らの有言実行には、大きな違いがある。

僕たち一般人は、「有言」することで、「実行」の伝手にしようとします。

だから、実行する前に、誰かに褒められたとき、あたかも実現してしまったかのような錯覚に陥る事もあるのです。

だが、成功者の「有言」は、宣言することに何の価値も感じてはいないという。メディアの数字、企業アピールによる株価とか、自分以外に影響を与えるため、他者からの称賛やリスペクトなど、一切関係ないとさえ思っているというのだ。

「やってみたい、だからやる」そう決めたら、彼らは損得など考えずにとにかくやってしまう。というより、すでに実行中だったりする。

「不言・即実行」ですから。

僕たちがしている有言実行は、有言ありきの実行で、それの宣言による周りの反応や周りの協力にばかり意識が向いてしまう。

だが、成功者の方たちの有言実行は、実行ついでの有言(すなわち不言実行)で、宣言による周りの反応は、メディアの数字やマスコミ側が反応しているのです。

有言だろうと、不言だろうと、かんじんなのは「実行」。「即実行」だということである。

有言と不言の両立を目指そう

もう一つ、気がつくことがある。

実は、自分自身の苦手な部分を補うため、より高い効果をあげるために、この有言と不言の2つのタイプを使い分けしながら、両立している人がいるということです。

あなたの周りの人を思い浮かべてみてください。「あの人はどちらのタイプといえばよいのだろう?」そんな人はいないでしょうか。時に、「有言実行」を実践し、普段は、「不言実行』」のスタイルだったりもする。そんな人がいます。

時にはアピールにも近い、発言が必要という場面もあり、多くを語ることが、マイナスに作用するという場面もある。

どちらのタイプがいいとは一概に言えないのが現実なのです。プラス面とマイナス面をしっかりと理解したうえで、「有言実行」と「不言実行」を使い分け、両立ができれば、成果も効果も、そして評価も今よりも向上するはずです。

だが、有言実行と不言実行を両立させることは、成果を上げるための有効なスキルではあるが、そう簡単にできてしまうことはではない。

まず、はじめに必要なことは、自分自身が現状でどちらのタイプに属するのかを知るということ。自信を持って、「有言実行タイプ」だとか、「不言実行タイプ」だといえる人なんてそうはいない。

多くの人は、「どちらかといえば」程度で、自分のことをどちらのタイプかを判断できないでしょう。

しかし、よく考えてみて下さい。

何かをしようと誓った時、必ず、有言して実行するか、不言のまま実行するかの二者選択から始めなくてはならないはずです。

つまり、有言タイプがいいか、不言タイプがいいかではなく、時と場合により、2つを使い分け、実行を実現しやすい方を選択しなくてはならないのです。

有言と不言を両立させるためには、2つのタイプの特徴をシッカリと理解しておくことが大切。

今回の執筆が少なからず役に立つ情報になるのならこの上ない幸いだと思っています。

あなたがもし、「有言実行」タイプであるならば、そのスタイルは大切にしていくべきです。誰もができることではありません。

だが、宣言したことを他者の反応を気にしたり、賞賛されることを求めようとしては「代償行為」の罠にハマってしまう恐れもある事を肝に銘じておこう。

あなたがもし、「不言実行」タイプであるならば、そこへのこだわりは、今後も持ち続けるべきです。

そして、やると決め、言葉にする間の与えない「即実行」が成功の決め手となるでしょう。

ちなみに、僕は、どちらかといえば「不言実行」タイプ。たとえ身内でも、ほぼ話したりすることもなく、「これからこんなことをやる」という有言はありません。

別に、隠そうとするつもりはないのですが、「やります」というよりも、「やりました」って、結果報告をして、相手に度胆を抜かせることが「狙い」だったり「快感」だったりするからね。

それがある意味、モチベーションになってるってわけ。僕に関してはね。

ただし、有言・不言にこだわらずに、既に実行していないと、この快感はえられない。

実行ありきで、有言し宣言しようが、黙って不言を貫こうが、結局は今、するべきことがなされているかどうか、なのだ。