「昔ながらのお豆腐屋さん」に習うトレンドマーケティング

「昔ながらのお豆腐屋さん」に習うトレンドマーケティング

そもそも「トレンド」って何?

アパレル業界が、その年やシーズンの流行ファッションなどを「トレンド」として紹介する場合や、経済ニュースなどで聞く「トレンド」には、「相場の流れ」という意味を持ちます。

そうするとトレンドとは「流行」という意味だと思われますが実は、正しくもあり、間違いでもある。

「トレンド」を正確に捉えると、「今向いている方向」という意味になります。

ファッションにおける「トレンド」は、「今、多くの人の意識が向く方向」となり、多くの人が興味を持っているもの「ファッショントレンド」といいます。

一方で投資分野における「トレンド」は、為替や株などの「経済変動の動向」を意味し、上げか下げか?をチャートで「上昇トレンド、下降トレンド」というように使われている。

_ 今回は、アパレル業界でいう「ファッショントレンド」について触れてみたいと思います。

今年の流行は2年前から決っていた?!

ファッショントレンドはどこから生まれ、どのように広がるのかご存知でしょうか?

どこからともなく、自然発生的に生まれてくるのでしょうか?

毎年「今年流行りもの」として受け取っている「トレンド」の大半は、ある決まったプロセスに従って生み出されている。

ファッション業界のトレンドに関しては、業界側が「意図して仕掛けている」とされる。

では、ファッショントレンドを生む出すプロセスについて簡単に説明してみましょう。

まず、実販売される時期の約2年前から、フランスのパリに本部がある「国際流行色委員会」という機関が、年2回の会議を開き、2年先の「流行色」を予測して提案します。

この会議で提案される流行色を「インターカラー」といいます。

そして、インターカラー(流行色予測)の情報を元に、欧米各国のトレンド情報会社が「素材」や「シルエット」など総合的なファッショントレンドを予測し情報発信します。

(トレンド情報会社には「スタイリング・オフィス」「トレンド・ユニオン」「カルラン・インターナショナル」などが有名)

次に、トレンド情報会社から発信される情報を参考に、生地メーカーや糸メーカーが「素材」を開発し、ヤーン展(糸の展示会)とテキスタイル展(服地の展示会)が開催されます。

そしてこのヤーン展やテキスタイル展を基に、ファッショントレンドの情報発信として開催されるのが、デザイナーによる「デザイナーコレクション」。

この頃になると、「VOGUE」などのファッション誌を通じて、一般の人たちに向けて、ファッショントレンド情報が発信されるようになってきます。

さらに、各アパレルメーカーの展示会も順次スタートしていきます。

それに伴い、国内の一般ファッション誌からも、トレンド情報が発信されるようになり、徐々に消費者の間にトレンドが浸透していくようになる。

もう少し簡単に、プロセスの工程を一連の流れで見てみよう。

「流行色」を決定する
  ↓
「素材」や「生地」の方向付け
  ↓
「服地」の展示会を開催
  ↓
「デザイナーコレクション」を開催
  ↓
ファンション誌等の情報発信
  ↓
小売店等への販売

このように、約2年間の歳月によりファッショントレンドは生み出されます。

しかし、意図的にファッション業界が仕掛けたこのトレンドが実際、消費者にそのまま受け入れられるのでしょうか?

「アタリもあれば、ハズレもある」

いくら、ファッションビシネスのプロ達が、2年も前から「今年のトレンドはこれだ!」と定め流行をつくり出したとしても、消費者にそれが受け入れられるとは限らない。

かつて、街中に集まる若者たちから自然発生して生まれる「ストリートファッション」がトレンドを発信される事もあるが、

インターネットが普及した昨今では、インスタグラムなどのSNS発信により、それらの情報が瞬く間にいち早く消費者間に行き渡る時代になった。

つまり、今では女子高生や芸能人発の発信がファッションのトレンドを決めてしまうというものだ。

もはや、従来の業界側から発信するファッショントレンドだけが世の「流行り」として定着するとは限らなくなった。

アパレル関係者が発信するべきトレンドを元にアパレルメーカーは準じて商品開発をします。

しかし、SNS発信のトレンドを取れえきれないメーカーは、何が流行の服なのかが分からなくなってしまう。

つまり、売れる服を作ることができなくなってしまう。

そこで、アパレル業界に、急速に台頭してきたのが、「SPAモデル」だ。

直近トレンドを今すぐ販売できる「SPA戦略」

SPAとは「製造小売業」を意味し、自社製品を自前の小売店(直営店)で販売する企業のこと。

(SPAとはspecialty store retailer of private label apparelの略)

要は、製造(服のメーカー)と小売(服屋さん)のが一体となった業態のことを指し、日本では「ユニクロ」が代表的いえる。

SPAの画期的なところは、「消費者のニーズがすばやく商品に反映出来る」こと。

従来までは商品を小売店に卸すことのみを行っていたメーカーは、消費者のニーズが間接的にしか得られず、市場の動きに遅れをとっていた。

しかし「SPAモデル」の登場によって状況は変化しました。自社で店舗を運営しているため、店頭からの最新の市場ニーズが社内で迅速に共有出来るようになった。

つまり、ショップのPOSデータ(販売データ)を確認することで、最新トレンドをいち早く捉えることができる。

売れる反応によって、再生産を行うか、または改良を隔てるべきか、場合によっては生産中止にするかを決定し、最短で販売できる。

SPAモデルを採用するショップに置かれている衣服は、早いときには数週間で入れ替わることもあるとされる。

ファッショントレンドとは、業界側が2年前から意図的に決めたもの。

かつてはこれが当たり前だったが、あらゆるトレンド構築がなされる昨今では、「ハズレ」となるリスクが大きい。

一方、SPAモデルは、定められたトレンドではなく、リアルな直近のトレンド、つまり、「今流行っているモノ」を「今すぐ販売」を可能とした。

前者のトレンド構築よりも、「アタリ」となる確率は高くなり、製造での無駄を発生させないメリットもある。

インスタグラム発信のトレンドでも、SPA方式ならスピード対応できる。

「売れる確信がある」から再生産を行う。必要であれば即改良して直ちに販売する。

とにかくスピードを重視した「SPAモデル」こそ、今の「ファッショントレンド」だといえるのだろう。

実は、アパレル業界を席巻した「SPAモデル」は今から約20年前からすでに導入されている。

また、「ファストファッション」という通称で呼ばれる、複数の外資系低価格グローバルSPAブランド(GAP・H&M・ZARA・フォーエバー21など)が日本に上陸して約10年が経過。

ところが、大手アパレル企業の関係者は、こう嘆く。

「実は、SPAはそれほどうまく行っていない。不況の影響で、昨年秋以降の売り上げは特に厳しい・・・」

むしろ「うまく行っているSPA企業の方が少ない」というのが、実情だという。

かつて、ユニクロが「フリース」を爆発的にヒットさせたことをきっかけに、競合各社はこぞってSPAに参入。今や特に目新しいものではなくなっている。

だが、卸を介さない中間マージンのコスト削減と、トレンドに基づいた商品作りを最大の利点とする「SPAモデル」はいってみれば、低コストによる「トレンドの短サイクル化」。

店舗の売り場やお客様に接し、商品開発に生かすことで「ムダのない生産、販売」できるようになり、「自分の売りたいもの」を「売りたい価格」で販売することも可能だ。

にもかからわず、SPA戦略がうまくいかないのはどういった理由なのか?

「マーケットイン型」SPA戦略の弱点

SPAの登場前のファッション業界のトレンドに関しては、業界側が「意図して仕掛けている」でしたね。

つまり、作り手側の発信力が強く、ブランド側の個性がはっきりしてた。

しかしSPAの登場によって、市場のSNS発信のトレンドやニーズに合わせて、消費者が望んでいる商品を生産する「マーケットイン型」のビジネスモデルが主流となった。

マーケットインの発想によって「消費者の望んでいるであろうもの」「売れそうなもの」を作る仕組みは発展しました。

一方で、どの企業も店頭情報をベースに「売れそうなもの」を作るSPA方式を採用ことによって、同じような商品ばかりが世の中にあふれてしまうというわけ。

いわゆる「商品の同質化」が起こっていまうのです。

そしてこの問題と合わせて上げられるのは、「価格競争」の問題です。

類似する商品が安く販売されていれば、消費者である僕達は安い方を購入したいと思います。

そうなると、競合他社と勝負する要素が「価格」だけとなり、単純に価格を下げようとすると、商品を作る際の「原価」を下げる発想になりますが、原価が下がると品質ももちろん下がります。

原価を下げずに価格競争に勝とうとすると、大量に商品を作ることのできる大手企業が優位になります。

単純に「売れそうなもの」を作ってもダメ、ただ値段を下げてもダメ。そうしたジレンマが現在のSPAの課題と言えるのではないでしょうか。

昔ながらのお豆腐屋さんに習うノウハウ

ファッション業界を中心に、関係者に注目を浴びている企業戦略「SPA(製造小売)」。

その仕組みをシンプルにいえば、「製造から小売までを一貫して行なう小売業態」である。

これまで分散していた全てのプロセスを自社でコントロールすることにより、中間マージンのコストカットやお客の声を反映した商品作りが可能になる

つまり単純に「事業をより効率化できる」と言われている。

新たな勝利の方程式となった「SPA」の原点を辿ると、例えば昔ながらの「豆腐屋」。

大豆など原料を仕入れ、朝早く豆腐を作り、店頭販売や、夕暮れ時にはラッパを鳴らしての外売り、いわゆる「走る豆腐屋さん」としてその日のうちに売り切る商売だったとされる。。

私の子供の頃は、お豆腐屋さんが近所まで売りに来ると、母親がボウル(調理に使う深さのある容器)を持って買いに行っていた記憶だけが僅かに残っている。

それはさておき、昔ながらのお豆腐屋さんは、どんな豆腐を作ろうかと、すなわち企画も自分で考え、製造から販売まで一貫して手掛ける家内制の製造小売りである。

すなわち規模は小さくとも「SPA(製造小売)」の原点といえよう。

製造から小売りまでを一貫して行う商売モデルは「昔ながらの豆腐屋さん」に限らず、「肉屋のコロッケ」、「八百屋の漬物」、「魚屋の刺身」など、

いずれも作って売る「SPA(製造小売)」は昔から在していた。

食品だけでなく、今では少なくなったがオーダーメードの洋服屋、さらに時代をさかのぼれば鍛冶屋、籠屋なども「SPA(製造小売)」といえる。

しかし、「大量生産・大量消費の時代」を迎えて、仕入れて販売する方式が優位になり商業を支配、街中の昔ながらの製造小売は次第にその中で姿を消していった。

スーパーマーケットの大量生産の安価な豆腐に押され、後継者不足もあって年々姿を消しており、豆腐製造事業所の数は最盛期の昭和30年代は約5万軒だったが、今は4分の1以下に激減。

昔ながらのお豆腐屋さん、肉屋さん、八百屋、魚屋さん…

これらの「家内制SPA」の最大の強みはどこにあると思いますか?

“ 店頭のお客の声 ”を熟知しているという強みがある。

つまり、小売り業態は顧客のニーズを捉えた「販売のノウハウ」に優れている。

一方、メーカー業態は製造技術に優れてはいるものの、「売る」ためのノウハウはやはり小売系業態よりも劣るであろう。

話をアパレル業態にシフトします。

アパレル業界のSPAには2つタイプがあります。

それは「メーカー発のSPA企業」と「小売店発のSPA企業」です。

メーカー発のSPAタイプは、元々が製造業(メーカー)なので、モノづくりのノウハウを強みとして運営しています。

一方、小売店発のSPAタイプは、小売りのノウハウを活かした戦略を強みとする。

小売店発のSPAタイプは、もともと“店頭のお客の声”を熟知しているという強みがある。

企画・生産は商社やOEMメーカーに委託しているが、「外部から自社のコンセプトにあった最も条件のよいものを買い付ける」という“選別眼”を持ち続けた。

それにより、「自社で多くのリスクを抱えずに売りたい商品を売りたい価格で作る」という理想的な効率経営を実現した。

つまり、お客のニーズを掴むノウハウは以前から持っている小売店発のSPAタイプは、中間プロセスにおける「コストカット」に重点を置いている。

これは、「安いだけでなく、いいモノを買いたい」「ファッションは楽しみたいけれど、お金はかけたくない」という顧客の要望を具現化できるといえる。

一口にSPA企業といっても、小売店発のSPA企業は有利だとされる。

「昔ながらのお豆腐屋さん」と同じビジネスモデルが、今でも有利だといえる。

本来、「店頭の顧客の声を最大限に生かす」という店頭主義が原点にあるはずのSPA。

他ではマネができない商品力やビジョンを持つ企業こそが「ホンモノのSPA企業」であり、流通大激変時代を生き残る「勝てるSPA企業」なのではないだろうか。