「なぜ?」の問い立ての方向と展開

「なぜ?」の問い立ての方向と展開

目の前の一つの漠然とした「問い」も、あらためてよく見ていくと「複数の問い」から成り立っていることに気づく。

その漠然とした「問い」を複数の「小さな問い」に分け、それぞれの問いに答えることが最初の問いへの解答になるようにしていく方法がある。

さらには、分けられた複数の問いの間のつながりを考えていくことで、最初の大きな問いに、具体的な答え導くことができる。

政府のキャッシュレス決済に対するポイント還元の狙いは何か?

例えば、「政府のキャッシュレス決済に対するポイント還元の狙いは何か?」という一つの大きな問いを立てたとします。

当然だが、単に疑問に思っているだけでは、その答えを見つける事はできません。

具体的な小さい問いに分解するにもその筋道が全く見えてはこない。

どうなっているのか?

さて、「政府のキャッシュレス決済に対するポイント還元の狙いは何か?」という一つの問いを具体的な小さい問いに細分化させる第一ステップとして、調べる・調査することが大前提です。

何事も、疑問に対する答えを見つける第一歩として、「どうなっているのか?」という実態を把握しなくてはいけない。

それは単純に、ネットで調べる、新聞を読む、詳しい人に聞いてみるなど、集められる情報を集め、問題に対する背景の実態を知ること。

すると、政府が「ポイント還元」を検討している理由がいくつかわかります。

実際、インターネットでいろいろ調べてみますと、その実態を把握することができます。

  • 消費税増税による消費の落ち込みを回避するため
  • 諸外国に対して日本はキャッシュレスの普及が遅れているため
  • 外国人観光客の利便性をあげるため
  • 東京オリンピック開催、大阪万博など多くの訪日外国人が現金を持っていないことが多いため
  • 取引の透明性を高め、脱税の防止につながるため
  • 政界の支持率回復のため

・・・など。

このように「どうなっているのか?」という実態を問う形式の問いの中には、ちょっと調べてみれば答えがわかる場合もあります。

しかし、実態を調べるという問いから分かる答えは、普通の人ならだれでもやっている事であり、単なる「情報収集」です。

「実態を調べる問い=情報収集」は、一見答えを見つけたように思えるが、実は「考える」過程の材料でしかないということ。

じっくり考えなくても、「調べればわかるだろう」的な、実態を調べる問いにとどまるかぎり、そのままでは、次にさらに考えていくことを誘発しない。、そういう問いのかたちなのです。

「なぜ?」の問いの有効性と落とし穴

「どうなっているのか?」という実態探しの問いに対し、さらに「考える」ステップアップするためのキーワードは、「なぜ?」の問を立てることです。

「なぜ?」という問いが有効なのは、「どうなっているのか?」という実態に対する事実に対し、その原因と結果の関係、すなわち、因果関係を見つけ、本質的な答えを見つけるための展開手段となる。

ですが、「なぜ」という問いが有効なのは、問いの展開を可能にするからというだけではありません。

ほとんどの場合、「なぜ?」の問いに対し、直線的に展開してしまうことがかえって、根本的に間違ってしまう場合もあるということです。

例えば、子供が大人に対し、「どうして?」「なんで?」と、しきりに聞いてくることがあります。

それに対し、大人な「なぜなら~だから」と説明すると、再び子供はその説明に対し、「どうして?」と聞いてきます。

「なぜ?」「なぜ?」と深堀りを繰り返す、いわゆる「なぜなぜ問答」は、いくら「なぜ」の問いを立てたとしても、結果的に全うな答えを見つけることは愚か、見当違いのおかしな答えに辿りつき、子供の質問に対して適当にあしらってしまう。なんてことはないでしょうか?

このような、直線的な問いの展開は、そもそも開く入り口を間違える可能性がよくあります

誰がどうなのか?

話を「政府のポイント還元事業の狙いは?」に戻します。

実体を調査した結果では、「消費税対策」「訪日外国人対応」「脱税防止」「景気回復」・・・など、さまざまな実態がわかりました。

その実態に対し、さらなる「なぜ?」の問を立てる事が「考える」こと。

そこで、まずは、それらの実態調査に対し、「主語」を設定します。

例えば、「ポイント還元で増税の負担を軽減する」という実態は、「消費者」にとっての理由です。

一方、「景気回復のため」、「脱税を防止するため」という実態は、政府側、つまり「国レベル」にとっての理由です。

このように、実態調査に対し、主語を設定することで「誰がどうなのか?」を区別する事ができ、小さな問いに細分化する上で、明確な「なぜ?」の展開を可能とします

では、あらためて、「政府のポイント還元事業の狙いは?」の問いを考えてみよう。

第一ステップとして、実態調査をする。

そして、それらの事実に対し、「主語」を設定すると、「消費者」「国」「加盟店」の3つが考えられます。

ポイント還元事業の狙いを「加盟店」側にスポットを当ててみよう。

キャッシュレス決済を導入する加盟店に参加する事のメリットは何か?

さて、このように、小売店や事業者側がキャッスレス決済を導入することは、いくつかのメリットがあります。

しかし、メリットもあれば、デメリットも当然あり、実際キャッシュレス決済を躊躇する店舗が多いとされる。

なぜ、キャッシュレス導入を躊躇するのか?という「なぜ?」を展開していきます。

なぜ、キャッシュレス決済で得られるメリットがたくさんあるのに、対応に消極的な店舗が多いのはどうしてなのだろうか?

政府が掲げる「キャッシュレス普及」を実現するには、そもそも小売や事業者側の積極的な加盟店の参加が必須条件だ。

キャッシュレス対応していない店舗では、消費者側にとってのメリットがあったとしても本末転倒。

ポイント還元事業の狙いと仕組みを考察

店舗側のキャッシュレス導入のデメリット対策として政府のポイント還元事業では、それとは別に加盟店手数料補助事業もあり、対象事業者になると同じ対象期間中の加盟店手数料の3分の1は、国から補助金が出ることになっているとされます。

さらに、キャッシュレス決済のための端末を中小・小規模事業者が導入する場合、国は導入費用の3分の2を補助するとのことだ。

キャッシュレス決済の端末を導入したい中小・小規模事業者は、対象期間中なら事実上「自己負担ゼロ」で導入できる。

決済事業者から見れば、導入費用の3分の1だけ負担すれば、加盟店に決済端末を置いてもらえるであろうということだ。

すると、政府の「キャッシュレス・消費者還元事業」は、消費増税対策の一環の事業ではあるが、キャッシュレス決済普及に向けた仕組みが埋め込まれた事業でもある事が見え隠れしてくる。

この「キャッシュレス・消費者還元事業」は4つ予算配分に分割されている。

「ポイント還元」「決済端末導入補助」「加盟店手数料補助」「キャッスレス決済普及の広報」。

「ポイント還元」「キャッスレス決済普及の広報」は一般消費者への還元が主目的であり、国民の関心も高いのは当然だ。

しかし、「決済端末導入補助」「加盟店手数料補助」に多くの予算を割り当ててしまうと「ポイント還元」回せる予算がそれだけ減ってしまうことになる。

そこで、予算執行の側からみれば、キャッシュレス決済が普及しない一因である加盟店手数料を下げるように促すことができれば、キャッシュレス決済が進むだけでなく、消費者のポイント還元予算をより多く確保できるメリットがあるのだ。

ちなみに、ポイント還元事業では、消費者がキャッシュレス決済で支払った額に対し、中小の個別店舗には5%、フランチャイズチェーン加盟店には2%のポイント還元を行う。ただし、還元分の全額を国が補助金で出すわけではない。なぜなら、受け取ったポイントを期限までに使わずに失効すれば、消費者には還元されないことを考慮するからだ。

つまり、消費者がもらったポイントのうち失効しそうな分は、国は補助しないのだ。失効率は決済事業者が過去の実績データを持っていればその数字を用いるが、そうでない場合は国が失効率を40%と設定する。加えて、不正防止や高額取引の排除を目的に、決済事業者には消費者への還元額に上限を設けるよう求めている。

要するに、ポイント還元事業に割くことのできる予算には限りがあるということだ。したがって、ポイント還元事業により多く予算を充てるには、加盟店手数料を下げてもらうことが表裏一体になっているともいえよう。

経済産業省は、登録された決済事業者が提示する加盟店手数料などのデータを一覧にして公表することで、手数料を事業者間で比較できるようにして競争を促し、引き下げを強力に推し進める意向である。

「なぜ?」の問い立ての方向と展開

「政府のキャッシュレス決済に対するポイント還元の狙いは何か?」という一つの大きな問いを立てた時、「どうなっているのか?」という事実の実態を調べ上げ、さらに「なぜ?」の問いを展開する。

その際、方向性を間違ってしまわないように、対象となる「主語」を設定し、展開を深堀していく事は重要です。

しかし、「なぜ?」の思考法は、あらゆる方向性への展開を可能とするため、ここで挙げた手段は一つの事例にすぎないことを理解しておこう。

要は、「なぜ?」の問い立てに対し、単眼的に捉えるのではなく、複眼的な思考を要するという事です。

そして、なぜ?の方向をどの位置に設定するか?どこに展開していくか?で導き出される答えは全く異なるという事。