「立ち食い」スタイルの儲けの秘密は?

「立ち食い」スタイルの儲けの秘密は?

椅子を用意せず「立って食べる」設備のみを持った飲食店。そば屋にうどん店、呑み屋、焼肉・ステーキ、天ぷら、寿司・・・

最近話題の “立ち食いスタイル”

古来より馴染のある「立ち食いそば」にとどまらず、2010年代に入り「俺の」や「いきなり!ステーキ」などに代表されるフランス料理やステーキなど調理に時間がかかり、従来立ち食い向きではないと言われてきた料理を提供するチェーンも複数現れている。

直近では、「餃子の王将」を展開する王将フードサービスは、東京都内で立ち食いスタイルの新業態「餃子の王将Express(エクスプレス)」のアトレ秋葉原店を2019年6月27日にオープンします。

おいしい! 早い! 新しい! 新業態1号店「餃子の王将Expressアトレ秋葉原店」オープンのお知らせ | お知らせ | 餃子の王将

「立ち食い」戦国時代突入の背景には

「立ち食い」の起源は、あくまで諸説にすぎませんが江戸時代から始まった文化と言われています。さっと立ち寄り、寿司をつまむことが、江戸の人々にとって粋なことだった。

近代でも立ち食いの文化は発展し続け今でも根強く人気を博しているが、世間的には「立ち食い = サラリーマン」とか、もっというと「立ち食い = おじさん」というイメージがあったかもしれない。

だが最近では、女性客でも気軽に入れるイタリアンやフレンチを扱うおしゃれな立ち食い店が増えたことでより幅広いターゲット層を獲得しています。

「高級感な立ち食い」スタイルが普及した背景には、ここ最近の生活スタイルの変化が影響していると考えられます。

経済状況は決してよくない昨今、不景気ながらも「美味しいものは食べたいけど食費は押さえたい」というニーズはもともとあったということ。

そして、共働き世帯が当たり前になり、子どもをもたないという選択をする家庭や単身者など、多様な選択を自由にできる時代だからこそ、気軽に高級なものを気取らず気軽に安く食べられる「立ち食い」がマッチングしているのかもしれません。

さて、今回はこの「立ち食いスタイル」の「儲け」の秘密について取り挙げてみました。

私の地元、姫路駅の名物「えきそば」にちなんで、「立ち食いそば屋」の儲けのカラクリを紐解いてみよう。

立ち食いそば一杯500円以下で儲けはあるのか?

「立ち食いそば」は大抵、300円~440円とワンコインで立食可能なリーズナブルな価格帯です。

お手頃価格がウリではあるが、かけそば一杯当りの儲けはどのくらいか?

まず、原価率を考察してみよう。

通常飲食店の食材原価率は、30%以下が基本水準とされる。

調べた所、そば一杯100gの場合の原材料費は以下のとおり。

麺の原価=約50円
出汁の原価=15円
かけそば1杯の原価=65円

原価率30%の水準で売価を割り出すと、

65円÷30%=216円

つまり、かけそば1杯を216円以上で利益がでる計算となる。

ワンコイン(500円)以下の蕎麦は安すぎるように思えるが、値段的に飲食店としての基本水準に即していることが分かります。

しかし、いくら原価率30%の水準をクリアしたとしても、元々の売価が低いため当然儲け金額も低くなります。つまり、お客一人当たりの儲けが少ないとなると、たくさん数を多く売りさばかないといけない。

立ち食いスタイルの「儲け」の仕組み

立ち食いスタイルだと椅子が無いのでスペースをとる設備が少なくなります。設備のスペースがなくなる分、時間当たり多くの顧客を招くことが可能になるということです。

そして、立ち食いスタイルの大きなメリットは「手軽」であること。注文してすぐに料理が提供され、お客様によっては約5分程度で完食・退店という定番スタイルです。

という事は、一人当りの店内の在籍時間は座って食する定食屋や飲食店よりも短いため、「回転率」が良くなります。

飲食店における「回転率」とは、客席に対してお客様が何回入れ替わったかを表す指標といい、以下の計算式で算出する。

回転率=お客様の数÷客席数

例えば、客席数が20の店に、開店から閉店までの間に100人の来店があったとする。

この場合の回転率は、100÷20=5

一日の間にお客様が5回入れ替わった(回転)ことになります。

回転率が高ければ高いほど売り上げが増えるということは、計算からも分かります。

仮に、一人当たりの単価が低い場合は回転率を上げなければ利益が得られません。逆に客単価が高いと、回転率が低くても利益を得ることはできるということです。

普通、客単価と回転率の双方を上げることは現実的ではありません。なぜなら、客単価が上がるという事はそれだけ料理の品数が多いか、高級料理だと味わいながら食されるため、ササッと食べて退店とはいかない。

つまり、お店が提供する料理の種類やコンセプトによって、客単価と回転数どちらかを重視せざるを得ないトレードオフの関係にあるといえる。

さて、和製ファスト・フードとも呼ばれる立ち食いそば・うどん店は、お客様の滞在時間が短く客単価が低いため、顧客回転数を上げて多くのお客様に商品を提供できるように効率的な運営が求められます。

立ち食いそば・うどん屋は、券売機で食券を買って、カウンターでそばを受け取り、素早くかきこむ流れが一般的です。

では、1時間当りの売上高をザックリと計算してみよう。

1人当りの滞在時間が平均約6分だとする。

1時間当たりの回転率は、60÷6で10回転。

席数が15席の店なら、10×15で1時間当たりの総客数は150人。

かけそば1杯400円だとすると、150人×400円で6万円。

1時間当りの売上は約6万円だと想定されます。

比較対象として、一般的な定食屋さんの場合の1時間当りの売上高を大雑把に計算してみます。

定食屋さんでは、注文をしてから料理提供まで多少の時間はかかります。

食べるのにもそれなりの時間を要するため、どんなに急いでも約20分は在席すると想定する。

1時間当たりの回転率は、60÷20で3回転。

席数は立ち食いそば屋と同じ15席の店なら、3×15で1時間当たりの総客数は45人。

定食の価格が800円だとすると、45人×800円で3万6000円という計算になります。

「客単価」をカバーする「回転率」、立ち食いそば屋の強みはここにあった。

実は、立ち食いそば屋の儲けの秘密は他にもあるという。

それは、「丼のカタチ」。

一般のそば屋が使用している丼は、器の側面が丸みを帯びた形で汁がタップリと入る形状になっている。

汁が360ml~400ml、店によっては、450~500ml程度といわれている。

一方、立ち食いそば屋の丼の形はどうなっているか?

全ての店ではないが、器の側面が「切り立っている」形で、引き絞った形状になっていますね。汁は約270ml程度にまで抑えることができ、標準的な400mlの丼と較べて、約30%以上も少ない汁で提供できるとされる。

汁の少量化は、原材料の圧縮にとどまりません。省スペース化、光熱費の低減、仕込み時間の短縮、ロスの低減をも意味します。汁はそば屋の要、自店の味を大切にしながらの経営努力が伝わります。

さて、あなたはこれまで何の「立ち食い○○」に足を運ばれましたか?

そこで、どんなことに気が付くでしょうか?客層、料理の質、提供時間、定員の数など、一顧客として楽しむと同時に、マーケット感覚を働かせてみるものおもしろいと思いますよ。