「利己的行動」と「利他的行動」のジレンマ

自分と同じように得をしたいと考える相手がいて、相手の考えや行動を考慮した上で、自分が最も得をする最適な方法を決める必要があります。
「相手がいる状況の場合、どんな行動をとるのかベストか?」を考える。
つまり、自分と1人以上の相手がいる時、自分がどういった行動(戦略)を選択すれば、 自分にとって良い(利益が高い)かを考える思考理論を、「ゲーム理論」という。
あなたは、何事も「損」か「得」かで判断しますか?
人は誰だって「損」をしたくありません。
だから損得勘定で動くことは「悪」ではない。
しかし、「ジレンマ」という困者のは、損得勘定の強いことが原因かもしれません。
例えばこんな・・・・。
自分はこのやり方で仕事を進めていきたい。
しかし、上司は別のやり方を求め仕方なく上司に従う。
自分のやり方でやると「評価」が下がり、
上司のやり方をすると「不満」が溜まる。
こんな仕事辞めたいけど、転職のあてもなく家族もいる・・・
前に進めば虎と出会い、後ろに退けば狼と出会う
多くの人は仕事をしながら多くの「ジレンマ」と戦っている。
解なし「絶対解」を求めようとするとジレンマに陥るが、自分や自分を含めた皆が頷ける解、つまり「納得解」を求めなくてはいけない。
問題を整理し、ゲームの構造が理解できるからこそ、最適な解決策を導き出せる。
“ ゲーム理論のチカラ ”はそこにある。
戦略的思考最強の頭脳プレイ「ゲーム理論」の思考法囚人のジレンマ
「ゲーム理論」といえば、「囚人のジレンマ」の理解からすべてが始まるとされる。
囚人のジレンマの何が「ジレンマ」なのか?起きているゲームの構造をハッキリと理解し、そこから将来的にどんな事態が予測されるか?
そして、ゲームのどの部分を改善すれば問題を解決できるかを解き明かす。
今回の内容をご理解頂くことで、「ゲーム理論のチカラ」をより捉えることができると願っています。
では、はじめましょう。
ゲーム理論の代表格モデルである「囚人のジレンマ」について紐解いてみます。
……………………………………..
強盗をした2人の囚人(AとB)が逮捕された。
しかし、有罪を確定するには証拠が不十分なので、警官はAとBをそれぞれ別の部屋に入れて、次のような取引を持ちかけます。
(AとBには同じ条件を提示する)
君が自白して、相棒が黙秘したら、君は無罪となり相棒は懲役5年となる。
君が黙秘して、相棒が自白したら、君は懲役5年となり相棒は無罪となる。
君と相棒の両方が自白したら、2人とも懲役3年になる。
君と相棒の両方が黙秘したら、2人とも懲役1年になる。
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さて、追い詰められた2人の囚人はどう判断し、納得のいく選択を下すか?
それでは、囚人Aの立場になって頭の中で考えていることをのぞいてみよう。
もしあなたが、刑罰を下される状況に立たされたとすれば、真っ先に「自分にとって少しでも不利益とならない手段」を見つけようとしませんか?
できることなら「無罪」になりたいと思い、なんとしても「懲役5年」は避けたいでしょう。
だとすれば、あなたが囚人Aだとすれば、おそらく次のように考えるはずです。
囚人Bが自白したら、囚人A(あなた)はどうなるか?
囚人Aが自白 → 懲役3年
囚人Aが黙秘 → 懲役5年
まず、囚人Bが自白した場合、囚人A(あなた)の取るべき行動は「自白」です。
次に囚人Bが黙秘した場合、囚人A(あなた)はどうなるかを検証してます。
囚人Aが黙秘 → 無罪
囚人Aが自白 → 懲役5年
囚人Bが黙秘した場合、囚人A(あなた)の取るべき行動は「自白」です。
答えはでました。
囚人Bが自白しても黙秘しても、囚人A(あなた)の取るべき行動は「自白」が最適な選択です。
納得したでしょうか?
もし、ここであなたが「納得した」というのなら、残念ながら、
ゲーム理論を理解していない ── ?!
なぜなら、「自分にとって少しでも不利益とならない手段」を見つけようと考えてしまったため、懲役3年の刑を下される羽目になってしまったからです。
では、説明しよう。
囚人A(あなた)が考えたのは、囚人Bが自白した場合と黙秘をした場合の自分に課せられる刑において、とにかく自分が有利となる選択をした。
しかし、この考え方は一般的であり、何もおかしくはありません。
おそらく私も同じように囚人Aの考え方をするでしょう。
ということは、つまり囚人Bも囚人A(あなた)と同じ手段を取る可能性が非常に高いということです。
そうです。囚人Bは囚人A(あなた)と同じ、「自白」という行動をとるに違いありません。
警官がもちかけた取引は、「両方が自白したら、2人とも懲役3年になる」です。
さて、ここであなたはこう思うかもしれません。
「無罪にならなくとも、懲役5年はまぬがれたため、間の懲役3年という刑は、互いに納得いくのではないか?」
なるほど、確かにそれが互いの「納得解」だと思えるならそれでいいだろう。
しかし、もう一度、警官が持ち出した取引を慎重に見てみよう。
……………………………………
あなたが自白で相手が黙秘
→ あなたは無罪・相手は懲役5年
あなたが黙秘で相手が自白
→ あなたは懲役5年・相手は無罪
両方が自白
→ 両方とも懲役3年
両方が黙秘
→ 両方とも懲役1年
……………………………………
観察力の鋭い方は、すでに気づいているのではないでしょうか?
そうです。
両方ともが「黙秘」すれば懲役1年の刑で済んでいた、ではないでしょうか?
これこそがいわゆる「ジレンマ」構造だ。
お互いが最適だと判断した「自白する」という行動は、実は錯覚で「黙秘する」ことが最も最適なのです。
ゲーム理論の概念では、お互いに相手の戦略に対して最良の行動を取り合っている状態を「ナッシュ均衡」という。
しかし、ナッシュ均衡は、必ずしも最適な「納得解」とは限らない。
お互いが合理的だと判断した「自白する」はナッシュ均衡の状態です。しかし、これは「よくないナッシュ均衡」です。
なぜなら、最も合理的な最適解はお互いが「黙秘する」を選んだ状態だからです。
つまり、互いに安定した状態を「ナッシュ均衡」と呼び、必ずしもナッシュ均衡が問題を解決できる状態ではないという事を頭に入れておいてください。
ですが、ナッシュ均衡を見つけることは、問題点の発見となり、両者が「黙秘する」という問題解決策を導くために欠かせないものだからです。
「利己的行動」と「利他的行動」
問題は、なぜお互いとも「黙秘」という選択をしなかったのか?というところです。
その理由は3つある。
一つは、自分が黙秘したら懲役5年、相手は無罪という判定を恐れたからだ。
何としても懲役5年は免れたいという気持ちが強すぎて、「黙秘」という決断を下す思いきりをもてなかった。
二つ目の理由は、自分の損得だけを考えたため全体を把握できなかったから。
先ほどの囚人Aの考え方は、まさに利己的な考え方で、結果双方にとってより良い選択があるにもかかわらず最適な選択を見つけることができなかった。
もし仮に両者が「ゲーム理論」を理解し、全体を俯瞰して納得解の手掛かりとなる「ナッシュ均衡」を発見することができていれば、互いに「黙秘する」が合理的だと気付くであろう。
そして、三つ目の理由は、相手を裏切り自分だけが助かろうとしたからだ。
自分がが「自白」を選択すれば、無罪となるか懲役3年となるかのどちらかです。
それはつまり、相手が懲役3年、または懲役5年になるかである。
この「自分だけは」という考え方が、懲役3年という"マヌケ”な刑を下される結果となったことに気付かなくてはいけない。
実社会には、囚人のジレンマと似たような構造がたくさんあります。
お互いにとってより良い選択肢があるにもかかわらず、それを選びとる事ができないジレンマが。
利己的な「損」か「得」を考える癖があると、かえって自身を苦しめることもある。
一歩引いて、全体を俯瞰し、互いにとっての納得解を見つけるチカラを是非とも手に入れてほしい。
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