飲食店での「サブスクリプション型サービス」で採算はとれるのか?

飲食店での「サブスクリプション型サービス」で採算はとれるのか?

「定額制サービス」

最近あらゆる業界でよくみかけるようになったこのサービス。

「定額制」と聞くと、私は頭が古いのか電車やバスの「定期券」を思い浮かべてしまう。 気づけば、定額制サービスは身近な所でたくさん利用しているのが分かります。

例えば、新聞購読やスマートフォン、インターネット接続。

「どれだけ使っても金額はココまで!」 と内容が分かりやすく、値段も魅力的な定額制でのサービス購入はお得感や安心感を強く感じらる。

日々進歩するネットインフラやデバイスの向上・普及に伴い、消費者の考えが、モノを持たなくても、好きな時に好きなだけすぐに「利用できる」ことで満足できる人が増えているようだ。

今では生活の一部ともいえるスマートフォンの普及からすれば、いつでもどこでもすぐにアクセスし、利用できるサービスがヒットするのは当然ともいえるだろう。

定額制サービス(サブスクリプション)

「サブスクリプション」とは、提供する商品やサービスの数ではなく、 利用期間に対して対価を支払う方式のことでで、多くの場合「定額制」と同じ意味で用いられています。

「アップルミュージック」「スポティファイ」などといった音楽配信サービス、映画・ドラマが見放題の「ネットフリックス」は、現世のニーズを反映する定額制サービス(サブスクリプション)の代表例ともいえる。

今後もさらにサブスクリプションモデルは垣根を越えて拡大していくものだと予測される。

定額制サービス(サブスクリプション) ※以降 「サブスク」とも記載します

さて、消費者にとって様々なメリットがあるこの「サブスク」ですが、企業側のマーケティングの視点にシフトしてみよう。

サブスクリプション儲けの仕組み

定額サービスを利用してもらうための手段とは? 継続して顧客の利用を継続させるためには? 今回は、「儲けの仕組み」について探りをかけてみます。

前述した、「スポティファイ」や「ネットフリックス」は、デジタルな世界では、会員が1人でも1万人でも配信にかかるコストはほとんど変わらない。 定額制の会員が増えれば増えた分だけ利益が増す構造はすぐに理解できる。

「30に日間無料お試し期間」というフリーミアムで顧客の囲い込みを図り、アップセル戦略への仕掛けで有料の定額サービスへと誘導しているのがデジタル配信の一般的なマーケティング手法となっている。

しかし、他の業界での定額制サービスだと、すべてフリー戦略やアップセルが通用するとは限らない。 もともとフリー戦略は、新製品の販促や新規顧客の獲得を目的とする。

だが、今まで利用した経験のある居酒屋などの飲食店ではどうか? 今更お試し無料試食や試飲サービスをしたからといって、定額制へとアップセルが成功するとは考えにくい。

しかし定額制とまではいかなくとも、飲み放題・食べ放題サービスならすでに普及し、私たちは喜んで利用している。 酒杯を重ねて気持ちよく酔いたいグループにとって、「飲み放題」は強い味方となるサービスです。

その内容は当日限りの「2時間飲み放題」などが一般的。 一杯390円~500円くらいはする生ビールが、だいたい1500円前後を支払うだけで何杯でも飲める。 これほどありがたいものはないだろう。

ただ、お得な半面利用者は元を取ろうとできるだけたくさん飲むことに必死になり、落ち着いて楽しめないという面もある。

そんな中、業界初の「月額定額制飲み放題」を導入して話題となった居酒屋チェーンがある。 2018年2月より、全国350店舗を展開する居酒屋チェーン「アンドモワ株式会社」は、30店舗で「ワンマンス モワ パック」という「月額定額制飲み放題サービス」を導入したのはご存じだと思います。

もっとも、お酒を飲まない、個室の居酒屋に行きつけない方は興味を示す余地もないかもしれませんが・・ 額面通りに受け取ると、一定の料金を支払えばひと月にどれだけ飲んでもOKとなり、もう元を取ろうと必死にならなくてもよさそうだ。

こんな大サービスをして店は赤字にならないのか。果たして経営は成り立つのだろうか。 さて、期間に応じて料金を支払う「サブスクリプション」と呼ばれるモデルが「居酒屋」で儲けはでるのか? アンドモアの「ワンマンス モワ パック」の利用内容を見てみよう。

月額定額制飲み放題のコースは以下の4種類でカード方式となっている。

  • 30日間コース(3,000円)
  • 60日間コース(5,000円)
  • 90日間コース(7,000円)
  • 120日間コース(10,000円)

購入店舗にカードを持参すれば、有効期間中全250種類のドリンクが飲み放題になる。 30日のカードの場合、月に生ビールを6杯以上注文すれば得になる計算。 60日、90日、180日と期間が長くなればなるほど、元を取るために必要な杯数は少なくなる。

仮に120日間コースで毎日通えば、1回の飲み放題の金額はなんと「83円」。 生ビール(中ジョッキ)の原価が約150円なので、いかに激安であるかが理解できる。

しかし、この「ワンマンス モワ パック」導入の結果は、前年比売上1.5倍以上の店舗もあり、まさに成功と収めている。 業界初の居酒屋革命ともいえる「月額定額制」が話題となり、メディアに取り上げれたことも集客のキッカケとはなっているが、 問題はいかに「儲け」を出したのかが気になる。 いかようにもビールの原価割れは甚だしいが採算は取れているのか?

それを解明するには、「ワンマンス モワ パック」を利用する際の、「注意事項」に記載された内容をみれば、いかに意図的な仕掛けを施しているかがわかる。 注意事項は、17項目ありますが、全て記載するわけにはいかないので、次の5つ項目を要約して取り上げてみます。

  • お食事2品以上のご注文でサービス適用
  • 2名様以上での利用が条件 ・カードをお持ちでお連れ様は、単品飲み放題を1,780円→1,500円
  • 宴会コースは、カード持参のお客様に限り1,000円割引
  • 他の方に紹介頂き会員登録が完了した場合、有効期限を1週間(最大4週間)延長

では順に見てみよう。 サブスクサービスでの儲けの仕組みは主に3つ。

一つは、「料理で儲けるビジネスモデル」 飲み屋に来てアルコールだけを注文する人はいないことだ。 お酒をおいしく飲むにはうまい料理も不可欠であり、そこに、飲み放題を1カ月定額にしても料理で儲けるというビジネスモデルが成立する余地がある。

しかも、2回目以降来店は、飲み代が“ 無料 ”のような感覚になるため、おつまみとしての料理メニューを自然と贅沢してしまうとされる。

2つ目は、「飲み放題カードをもった人がお店の広告塔の役割を果たす」 居酒屋という業態ならではの集客効果をもたらすメリットがある。 居酒屋とは仲間たちと連れ立って行く場所であるものだとされる。

「ワンマンス モワ パック」には、一緒に来店した人の1回限り飲み放題が1780円→1500円と割安になる特典もついてくる。 それを誘い文句に、カード所持者が同僚や知り合いを誘ってくることを狙う。

3つ目は、「稼働率を上げて客数増加を狙う」 話題となる居酒屋の月額定額サービスにより、集客増となるため、回転率を上げないと儲けの機会損失を招いてしまう。 採算ラインギリギリのこのサービスは、客数増は必須。 「ワンマンス モワ パック」導入店舗は座席数がある大型店限定となっていて、このサービスを行うなら、最低でも30席は必要だと思われます。 個人で回しているような小規模な居酒屋で月額定額制飲み放題を導入してしまうと、顧客の回転が悪くなったときのリスクが高くなるためだ。

しかし、飲み放題で来店される顧客にとって時間はすでに儲けられているため、回転率を上げようにもそうはいかない。

であれば、打つ手は、客席の「稼働率」。

稼働率とは、店の客席がどのくらい稼働しているかどうかを表す指標です。 「テーブルが満席になった場合何%の席が使用されているか」という数値をパーセンテージで求める。

例えばテーブルがすべて埋まっていても、2人用の席に1人の顧客が座れば1席は空いたままになってしまう。 この場合の稼働率は50%という数値になる。 4人席のテーブルが10卓ある店で満席になったとする。稼働率が100%になるには40人の顧客が必要となる。

しかし顧客の内訳が4人客が2組、2人客が6組、3人客が2組だと顧客数は合計で26名。 26÷40=0.65で稼働率は「65%」となる。 せっかく満席になっているのに35%の空席が出てしまっているため、売り上げ効率が下がってしまいます。

一般的には稼働率は70%以上あれば良いと言われている。 稼働率をアップさせるにはできる限り空席を減らす稼働を要する。

ワンマンス モワ パックでは、「2名様以上での利用が条件」となっているのは稼働率を下げないためだと思われます。

考えてみれば、「サブスクリプション」を飲食店で導入するのは一見不向きに思えるが、定額制サービスでリピーターを確保できることの利点を考えれば、飲食ビジネスの新たな鉱脈ともなりそうです。

今回ご紹介した株式会社アンドモアの「サブスクリプション型サービス」が期間中見事に客数増を収めたのは、飲み代が激安になるという単純な理由ではないことに気付くはずです。

「サブスクリプション型サービス」を成功させるためには、動画配信や音楽配信であろうと、飲食店やアパレル業界であろうと、顧客との長期的な関係性が続くことが重要といえます。

そのため、顧客とのリレーションシップ(関係性)構築が上手くできれば、従来の販売手法よりも大きな収益性を見込める。

例えば、飲食店での定額制を顧客側の立場で考えた場合、 もっとも損なのは、期間内に1回しか利用しないこと。 また、料理を頼みすぎてしまい、結果的に通常の飲み放題のほうが安上がりだったというパターンも想定される。

そうなると、「あまりお得じゃなかった」と不満を感じることになります。 店側にとってはこのサービスを長期的に運用していけるかどうかがポイントです。