「おとり」に騙されない数字のテクニックで対抗

「おとり」に騙されない数字のテクニックで対抗

 「株式」ってわかりますか?

本題に入る前に、念のため簡単に説明しておきましょう。

Aさんは新規事業を立ち上げようとしましたが、必要な資金が足りません。

その事業資金を集める方法の一つとして「株式」の発行があります。

そこで資金を投資してくれる人(投資家)がいたとします。

資金を投資してくれた人にかわりに「株券」を発行し、その投資家は「株主」となり、発行会社(Aさんの新規事業)の出資者(オーナー)の一員となる。

株主は、企業に出資する対価として、配当金・株主優待を受け取る権利などを得ることができます。

配当とは、Aさんの事業が、稼いだお金(利益)の一部を、株主(投資家)へ支払うもの。

たとえば「1株あたり10円」の場合、1株を持っている株主(投資家)は、10円をもらうことができ、もし100株持っていれば10円×100株=1,000円の配当がもらる。

もし、1,000株を持っていたら10,000円です。

配当は「持っている株の数」と「受け取る金額」が比例するので、たくさん持っていればそれだけ多くの配当を受けることができます。

そして、購入した株価に対し、1年間でどれだけの配当を受けることができるかを示す数値を「配当利回り」といい、 計算式は、以下のようになります。

配当利回り(%) =配当(円)÷ 株価(円)

たとえば、「年間配当10円」、「株の購入価格500円」だったときの計算は、配当10円÷株価500円=0.02となり、2%の配当利回り。 この配当利回りの%(パーセンテージ)が大きければ大きいほど、配当金として株主に返ってくる割合が多いということになる。

それでは、以下の2通りのうち、どちらの方が配当利回りが多いでしょうか?

配当:20円・株価:1,000円 配当:30円・株価:2,000円 パッと見ただけではどちらが得かすぐに答えられません。

そんな時に便利なのが配当利回りです。

配当20円÷株価1,000円   

=0.02配 → 当利回り:2%

配当30円÷株価2,000円  

=0.015 → 配当利回り:1.5%

2%と1.5%の指標ならすぐに把握できる。という事です。

少し前置きが長くなりましたが、配当利回りは平均して2%~4%だとされています。

高配当利回りの企業でも7%くらいで、15%以上、ましてや20%になると、「怪しい」ということです。

ここからが本題です。

世の中には悪いことをする人は当然います。

先に説明した株式や配当利回りに知識があるかたは、「高配当詐欺」にひっかかることはないのですが、 毎年、ニュースになる「高配当をうたい高齢者をダマす詐欺事件」。

誰もが怒りを覚えたことはあるはずです。

この詐欺に引っかかってしまう対象者は「投資を知らないから」。

そこに付け込むことで、配当という「儲け」あたかも誘う事例が相次いでいます。

ある、エコ関連のNPO法人(仮名)が次のような告知を行いました。

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私たち、エコ関連のNPO法人(仮名)は、環境活動に貢献している企業に対し、投資を通じて応援しています。

当NPOにひとくち10万円を出資して頂ければ、その資金を環境企業に投資し、そこから生じる利潤から皆様に、「毎週最低額500円を配当金」としてお渡しします。

企業活動の成功率は高く、1,000円から多いときで約2,000円の配当金を得る事も可能です。

おじいちゃん、おばあちゃん。 タンスの預金になっている10万円を私たちに預けてみませんか?

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さて、この環境活動貢献を謳うNPO法人(仮名)に対し、あなたはどういう印象を持ちますか?

もしかすると、「環境活動に貢献している企業」に対して、「それはすばらしい!」と思ってしまうかもしれません。

ここまでも執筆の流れからして、これは被害の事例だということはすでに気づいている事でしょう。

お察しの通り、これはあきらかに「高配当詐欺」による本当にあった事例です。

この手口に引っかかるカラクリは、「毎週500円の配当金をもらえる」にあります。

色々なご意見があると思いますが、「毎週500円の配当額」は安く感じるでしょうが、おじいちゃんやおばあちゃんにとっては、孫へのお小遣いとしてはちょうどいい金額かもしれません。

それに、毎週最低500円の配当金で、多いときで2,000円の儲けが可能だと謳われると、年金生活で切り詰めているご年配の方にとってはありがたい話。

さて、株式投資に知識がある方は、一読しただけで明らかに怪しい「詐欺の手口」だと気づいたでしょう。

やっかいなのは、自分の両親が、「人様のためになるなら」と出資しようとしている時、「なんか怪しいからやめろよ」と言っても聞いてもらえない関係にあることです。

もし、あなたにも株式投資の知識がないとなると、この手口に騙されてしまう可能性は無きにしも非ずです。

ちなみに、単純平均による東証一部上場の全銘柄の配当利回りは「1.94%」です。

配当利回りが高いとされる上場企業でも4%~5%。だということを知っておいてください。

一般的に、株式のような金融商品は高い収益を見込めるものはリスクが高く(ハイリスク・ハイリターン)、逆に低い収益を見込めるものはリスクも低い(ローリスク・ローリターン)。

つまり、通常の金融商品では 大きなリターンを得るには大きなリスクを伴います。

大事なことなのでもう一回言います。

普通は、「大きなリターンを得るには大きなリスクを伴う」 つまり、投資で年に10%以上のの利回りを得たり、高い配当金を毎回もらう事が容易ではないことは、投資を経験している方であればカンタンに気付く事だと理解してください。

それともう一つ、 詐欺では「毎月高利回りの配当金」を約束している場合があります。

上場企業が出している配当金でも、大半は 年に1回か2回の 配当金を発行します。

つまり、上場企業ですら配当利回りの平均は2%で年に1~2回しか発行していないのに、「毎週500円の配当金」と謳っている時点で即刻「詐欺」だということ。

では、この「毎週500円の配当金」の手口を見てみましょう。 週単位にこだわらないで、月単位に変換してみます。

500円×4週間で「2,000円」。

次に、年単位にすると、2,000円×12か月で、「24,000円」。

出資額は10万円なので、配当利回り(%)は、

24,000円 ÷ 10万円 = 0.24

→ 配当利回り「24%」

「配当金」と謳われた時、すぐに出資金額から「配当利回り(%)」を割り出すことをしましょう。

そして、「10%以上の利回りは怪しい!」と疑いをかける事が大切。

少し冷静に考えれば、仕組みとしてあり得ないことが分かったはずです。

人によっては、「年利24%の利息がつきます」と謳われただけなら、「怪しい」とすぐに見抜けるかもしれません。

ですが、人は、「毎週500円」といわれると、ついつい「そうかな?」とおもってしまう。

それは、10万円という高額な出資に比べ、配当が500円という少額であったため、瞬間的に「安い」と感じてしまうからです。

10万円という数字に引きずられて、感覚がマヒしてしまう。

ただ単に、「毎週500円がもらえます」とだけいわれると、もっと怪しんだことでしょう。

このように、ある数字に引きずられて判断が左右してしまうことを、「アンカリング効果」という。

最初に提示された数字や条件が基準となって、その後の判断が無意識に左右されてしまう、という心理。

アンカリング効果を別名「おとり効果」ともよばれ、例えば、セール品の価格がそこまで安くなかったとしても、元値がかなり高ければ買いたい衝動に駆られしまう。

松竹梅であれば、一番高い「松」を先に見せることで、「竹」に対しより魅力を感じることです。

このアンカリング効果(おとり効果)に騙されることは、先の高配当詐欺の事例だけではありません。

あなたは、普段の買い物でもこの手の手口にまんまと引っかかっている。という事です。

買物をする際、「通常価格より50%引き」というような広告を見たことがあると思います。

そして、このような広告を見た際に、通常価格は知らないままで、「これは安くなっているのだな」という認識をしたことはないでしょうか。

これにはアンカリング効果が使用されている。

通常価格から割引されているという情報をもとに、商品の値段を安いと評価している状態です。

逆説的には、この商品においてあなたに事前情報があり、値段相場や通常価格を知っている場合には、アンカリング効果はあまり発揮されない。

ということです。

もっといいますと、買い物や投資など、「お金」に関することだけでなく、日常生活でも経験している。

例えば、皆さんが友人と待ち合わせをしていましたが、寝坊をしてしまいました。

自宅から待ち合わせ場所までは電車で1時間かかってしまいます。

そこですぐに友人に連絡をし、「1時間遅れてしまう」と言います。

このような場合、あなたがどれだけ急いで支度をし、1時間後に行ったとしても「1時間も遅れてきた」という印象しか残りません。

しかし、寝坊をしてしまったタイミングで「1時間半遅れてしまう」と言った場合、あなたが1時間で到着すると友人は「遅刻はしたが、急いで来てくれた」という印象が残るでしょう。

やっかいなアンカリング効果(おとり効果)に対抗するには、「単位変換」という数字のテクニックを覚えておくといいでしょう。

「単位変換」とは、身近な例でいえば、「4万67555㎡」と言われるよりも、「東京ドーム1個分」と言われた方がピンとくるはずです。

関西では、「甲子園何個分」のほうがポピュラーですが。

「ビタミンC1000㎎配合」よりも、「レモン50個分のビタミンC」のほうが、量をイメージしやすくなります。

この「単位変換」という数字テクニックは、実はマーケティング戦略の一つで、「お!これ買ってみようかな」と思わせるためのテクニック でもあります。

例えば、 「オルニチン25mg入りのみそ汁」 「しじみ70個分の栄養がある味噌汁」 では、どちらも表している量は同じですが、後者の方がより多くの栄養が詰まっているような印象を受けてしまうでしょう。

要するに、置き換わる数字の単位は、人がもつ基準がある。

それはつまり、つまり、単位を身近なモノに置き換えると、数字に対して親近感が湧くということ。です。

物の言い方、言葉の表現の仕方で、受け止める側の心境を大きく揺るがす効果があります。

大切なのは、自分の「基準」に置き換え、リセットさせることだろう。