「記憶」は思い出すことで、「記憶」する

「記憶」は思い出すことで、「記憶」する

記憶するというのは、ある情報を「取り入れる」→「保管する」→「取り出す」の3段階から成り立っています。

「取り入れる」とは、目や耳から情報が入ること。

「保管する」とは、取り入れた情報を脳内に保持すること。

「取り出す」とは、脳内に保持した情報を引き出す、つまり「思い出す」ことをいう。

私たちは、「記憶する」=「覚える」という認識が強いあまり、一にインプット、二にインプット、とにかく覚えよう、どんどん覚えようとばかりに注力し必死になります。

取り入れる情報量は、環境や学習量、経験内容、年齢により人それぞれ大きく異なるのは仕方ありません。

ですが、どれだけ多くの情報を取り入れたとしても、脳内に保管したままで、うまく取り出すことができなければ「記憶力がある」とは到底いえません。

そこで、脳内に保持してある情報を「思い出す力」を高める事ができれば、必然的に「記憶する力が高い」という解釈に至ります。

記憶する力がある人とそうでない人の違いは、3つ目の「取り出す」過程に差があります。

つまり、記憶したことを「思い出す力」があるかどうかの違いなのです。

思い出す事で記憶の定着率は高くなる

あなたは、何かを思い出そうとするとき、すぐに “ スマホ検索 ” するタイプでしょうか?

それとも、思い出せないのが悔しくて、思い出すまで必死に粘るタイプでしょうか?

今の時代、知らないことがあれば「検索」という奥義でいとも簡単に解決できてしまいます。多忙な人にとってはありがたいでしょう。

ですが、学生に「検索」という技を身につけさせ、それが癖になると、いざ試験の時になると、大変です。

なので、今の受験勉強は、「覚える記憶の訓練」よりも、「思い出す記憶の訓練」に力をいれてるそうです。

学生だけでなく、社会人になり試験を受ける機会があまりなくとも、思い出さなくてはいけない機会は多々あります。

「検索エンジン」は、生産性も高く「情報取得」に使うのであれば便利なものですが、忘れかけたことを「思い出す時」は、検索エンジンにたよらず、人に備えられた伝家の宝刀「脳細胞」にたよるべきです。

記憶の定着率を高めるには、情報を取り入れること、つまり「覚える」ことだと誰もがそう認識しています。

しかし実は、人間の脳というのは、「覚える(取り入れる)」ことも必要だが、
 「思い出す(取り出す)」行為の方が、記憶の定着率が高い  とされている。

“ 必死に覚えようとする ” よりも、一度でも見たものや聞いたこと、触ったものなどを、「え~っと、あれなんだっけな~・・」「たしかそれは○○だったような?もうそこまででているんだけどな~・・」

というように、
  “ 必死に思い出そうとする ” 時の方がより記憶する  のです。

思い出す記憶のメカニズム

「モノを覚える」といった高度なことを脳ができるのは、脳の中に「ニューロン」という神経細胞があるからです。その神経細胞(ニューロン)が互いにつながってできた神経回路のネットワークができています。

このネットワークは初めて記憶したときにその「記憶専用のネットワーク」がつくられます。

そしてこの記憶にアクセスすることで「記憶」として使用できるのですが、使用されないとだんだんとこのネットワークは弱く、細くなっていく。

最終的にはこの「記憶専用のネットワーク」にアクセスしようとしても回路が細すぎるためアクセスできない、つまり思い出すことができない、忘れてしまうといった状態になるのです。

要は、見たものや聞いたことなどを、「覚える(取り入れる)」行為は、脳内に一時的に保管(仮記憶)だけのことにすぎないのです。

その一時的に保管(仮記憶)情報に、再びアクセスする、つまり「思い出す(取りだす)」行為をしない限りは、完全には記憶されません

少し専門的に説明すると、インプットした情報は、ワーキングメモリという作業領域に取り入れ、必要とする情報を「海馬」という脳の一部分に一旦仮記憶されます。(=短期記憶)

そして、その仮記憶した情報に再度アクセスすることで、必要な情報だと判断されると、大脳皮質へと保持され記憶として定着されます。(=長期記憶)

この「再度アクセスする」という行為は、単に暗唱する、目で追う、話すだけよりも、「思い出す」ことで記憶の定着率は格段に上がるとされています。

思い出す力は「思い出しやすく覚える」こと

「思い出す」という行為は、先に説明したとおり、短期記憶から長期記憶へと定着させる効果と、長期記憶から取り出すさいに脳を活性化させる2つの効果をもたらします。

誰しも思い出せないことがあると、すぐに答えを見ようとしますが、必死に思い出そうとする行為は、「アハ体験」といって、脳内の神経細胞が一斉に活性化し、記憶の定着だけでなく、創造力、発想力が向上するとされている。

さらに、「思い出す」行為は、脳活性効果により、ボケ防止、アルツハイマー予防になると実証されています。

次の事例をみてみよう。

世界で初めて地球の大きさを測った人物は、ギリシア人の天文学者「エラトステネス」である。

この「エラトステネス」という言葉を覚える際、暗唱する、目で追う、話す、書くなどすることでも記憶は定着しますが、

「世界で初めて地球の大きさを測った人は○○」

というように答えを隠し、「思い出しながら覚える」ことで、記憶の定着率はとりわけ高くなります。

そしてこの「エラトステネス」という言葉を何度も繰り返し使うことで、長期記憶へと定着したとしましょう。

長期記憶は一生忘れない記憶だとされていますが、1年後、「世界で初めて地球の大きさを測った人は?」と尋ねられた時、果たしてすぐに思い出すことはできるでしょうか?

おそらく、「え~っと、なんだっけな~?」と少しは思い出そうとしますが、直ちに「スマホ検索」で答えをみてしまう、ではないでしょうか?

せっかく覚えたことが引き出せない、一生忘れない長期記憶を思い出せない。

ややもすると、思い出せない理由をすぐに「年齢のせい」にしてしまっているのではなかろうか?「いや~、もういい歳だからなかなか思い出せなくて~」というように。

いまさらではありますが、記憶力の低下に年齢は全く因果関係がないことが証明されています。詳しくは割愛させていただきます。

必死になって思い出すことで記憶力が高まる事は確かですが、やはりすぐに思い出せるほうがいいでしょう。

いかにして、「保持した情報をすぐに取り出せるか?」が今回のテーマ「思い出す記憶法」です。

では、どうすればより簡単に思い出すことができるのでしょうか?

結論から言いますと、  “ 覚えるときに、思い出しやすい工夫をしておく ”  ことで、容易に「思い出す」ことができます。

記憶の想起は「手がかり」が決め手

さて、保持した記憶を思い出しやすくするには、覚える(取り入れる)ときに、何かしらの工夫を施しておくと、簡単に思いだす(取り出す)事ができるという。

何かしらの工夫というのは、「フック」を作ることです。

フック(hook)とは、直訳すると、かかぎ針という意味で、帽子やコートをひっかけたりするあの「フック」です。モノをひっかけて自分が望むところに持ってくる道具のことを「フック」と言います。

では、覚える(取り入れる)情報に「フック」を作るというのは、「手がかり」を作る事。

つまり、見たものや聞いた情報に、“ 思い出すきっかけとなる手がかりを作っておく ” という事です。

保持されていた情報が、ある期間の後に外に現れることを「想起」といいます。私たちがいう「思い出す」にあたります。

「想起」(=思い出す)という行為は、先に説明したとおり、記憶においてきわめて大事な段階です。つまり、いかにして脳に保持された記憶を「想起」させる事ができるかどうかがカギとなる。

「想起」されるメカニズムは、複雑ではありません。「手ががり」つまりフックにより想起はおきるのです。

思い出す記憶「想起記憶法」

ここでいう、「手がかり」とは、「思い出すきっかけ」のこと。ある記憶を思い出そうとするとき、「きっかけ」により想起は起こる。ということです。

例えば、山登りをするとき、迷ってしまわないように、木に目印を頼りに登山、または下山するとおもいます。この「木の目印」は、正しい順路の「手がかり」です。

次のような例えもあります。

インターネットで「海馬」の情報を検索する時、その「海馬」という言葉そのものを知らない時、「記憶脳」という手がかりとなるキーワードで検索するはず。すると、結果に「海馬」が表示されます。

つまり、記憶の想起とは、検索エンジンとおなじで、関連性のある「手がかり」により、保持されている記憶を思い出せるということ。

この「手がかり」により、思い出せそうにない記憶をすぐ取り出せる。という事は理解できたでしょうか?

では、実際どうすればいいか?その方法はさまざまです。

「手がかり」により記憶を想起させる方法はいくつかありますが、どの方法がいいかを決めるのはあなた次第だということを頭に入れておいてください。

というのは、思い出すきっかけというのは、関連性のある言葉だったり、ニオイだったり、音楽のリズムだったり、とあるエピソードだったりなど、その取り出したい記憶に応じた「手がかり」は異なる。人それぞれによっても様々です。

それでは、今回は、一つの方法をご紹介しておきましょう。

先ほどの、「エラトステネス」という言葉にフックを作って、記憶の想起をしてみます。

「エラトステネス」という言葉をすぐに思いさせればいいのですが、おそらく普段使わない言葉なので忘れてしまっているでしょう。

日常生活の中でも、「あれ何だったけな~」「確か、あ…何とかだったような?」というように、覚えたはずなのに思い出せないことは、「手がかり」で記憶しておくと想起しやすくなります。

その「手がかり」となるのが、「関連性のある仲介言葉」です。

仮に、「世界で初めて地球の大きさを測った人物」に「偉い人」を手がかりにしたとしましょう。

偉い人 = エライ人 = エラトステネス

というように、関連性のある仲介言葉を「手がかり」にする方法です。

「世界で初めて地球の大きさを測った人物」

「偉い人」(仲介言葉)=手がかり

「エラトステネス」

この方法は、実際にプロの記憶法とされ、単純に「関係法」という記憶想起法です。

普段から「思い出す」訓練をしよう

使わない神経細胞(ニューロン)のネットワークは細く弱くなりますが、反対に頻繁に使う神経細胞のネットワークは太く強くなり、その結果強固で思い出しやすい記憶となるのです。

日常生活を思い返していただければ、生活の中で頻繁に使うものはしっかりと覚えており、めったに使わない記憶はあいまいだったり忘れやすくなっているということはないでしょうか?

これがまさに記憶を頻繁に使う、「思い出す」ことによって得られた結果です。そしてこの特性を生かすためには頻繁に「思い出す」ことが記憶の定着にとても重要です。

当たり前になってしまったスマホ検索は、「情報収集」として利用し、既存の記憶を思い出す時は、「脳内検索」を使ってみよう。

記憶するというのは、ある情報を「取り入れる」→「保管する」→「取り出す」の3段階から成り立っています。

「取り入れる」行為は、ネットの検索エンジンにお願いし、

「保管する」行為は、あなたの脳がしてくえます。

そして、「取り出す」行為は、あなたの役目、“ 思い出す ”事です。

記憶するとはこういうことなのです。