「記憶のルール」に基づいた記憶法【第五回】記憶と睡眠の関係について

記憶力のいい人と言うのは生まれつきなんだ!
元々、頭の回転が速い人なんだ!
と思われがちですが、実はそうではなかった。
前回では、脳科学に基づく記憶のメカニズムについて学びました。覚えるということは、ひたすら闇雲に暗記するのではなく、気合を入れた根性論ではないことに気付かれたと思います。
まずは前回までの復習です。
一度見たり聞いたりしたことを記憶したとしても、1日立てばその約半分はわすれてしまう。脳のメカニズムで「短期記憶」といい、 大脳辺縁系の一部である「海馬」と呼ばれる部位に一時保管され、なにもしなければその記憶は消し去ってしまいます。
海馬に保持された短期記憶は、時間とともに全てが消去されるわけではなく、再び「思い出す」ことで、記憶の倉庫「側頭葉」と呼ばれる部位に保管される。
側頭葉に保管された記憶は、「長期記憶」といって、必要な時に必要な情報をいつでも取り出せることができる “ 忘れない記憶 ” として定着する。
要は、一時保管された「短期記憶」をいかにして、永久保管の「長期記憶」へと移行させられるかがポイント。短期記憶から長期記憶へと移行させることを「記憶の定着」と呼ぶ。
記憶を定着させるためにやるべきことは、ベストタイミングによる反復(繰り返し)。最も大切なのは、1回目に学習したそのあとすぐに(1時間以内)再度、復習する事です。そして、24時間後に2回目の復習、1週間後に3回目の再チェックをすることで、記憶の定着量は倍増されていくのです。
反復とそのタイミング。この記憶のルールを守らなければ、どんなに優れた記憶術を施してもなかなか効果はでにくいでしょう。
第二回より、冒頭でまず前回までの復習を綴っております。忘れかけたタイミングで再び反復(繰り返し)し、記憶の定着率を上げるためです。
そして、「記憶のルールに基づいた記憶法」も今回で第五回目になりました。
実は、このテーマを題した当記事の内容は、何一つ「特殊な記憶法」については記していません。ぶっちゃけていってしまうと、「反復とそのタイミング」について、にすぎない。数回に記事を分ける必要もない内容なのです。
わざわざ、日をまたぎ、数回に分けてお送りしている理由は、当テーマでもある「記憶のルール」に基づく演出をするため。覚えたことを反復(繰り返し)させる「分散学習」なのです。
第二回より、冒頭でまず前回までの復習を、わざわざ記事内容の半分くらい使って綴っております。それは、忘れかけたタイミングで再び反復(繰り返し)し、記憶の定着率を上げるため。
そして、数回に分けているその理由は、もう一つあるのです。
当テーマを第一回より、続けて読んで下さる方は、記事と記事を読むその時間内では必ず、「睡眠」をはさんでいることでしょう。
実は、「睡眠」と「記憶」は切っても切れない関係性がある。というのが今回の学びです。記憶を司る脳内の「海馬」は、私たちが眠っている間に、せっせと記憶の整理と定着をしているのです。
記憶の定着のベストタイムは「睡眠時間」
記憶には「短期記憶」と「長期記憶」があることはすでに説明しました。短期記憶は一時的に記憶を維持しているもので、海馬で蓄えられ、記憶を消すか残すかを仕分けします。海馬が記憶を消すか、それとも側頭葉に長期記憶として残すかは「睡眠」と深く関係しているのです。
記憶を司る海馬は、記憶の定着活動を最も活発に行うのは、実は私が眠っている時、正確には夢をみている浅い眠りの間にせっせと記憶の整理をしている。
私達の睡眠には「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」があります。ノンレム睡眠は深い眠りで、脳も身体も眠っている状態で、このときに成長ホルモンが出て細胞の修復をします。つまり、ノンレム睡眠を十分に取らないと前日の疲れ(=細胞破壊)が取れないということになるわけでとても大事な睡眠です。
しかし、記憶にとって大切なのは実は浅い眠りで夢を見る「レム睡眠」のほう。レム睡眠中、身体は休息していますが、脳は起きて活発に活動しています。一体脳はなにをしているのかというと、「記憶の整理と定着化」をしているのです。
具体的に言うと、レム睡眠中に記憶の定着化を行うのは、記憶の番人「海馬」が行います。海馬が持つ短期記憶と、側頭葉に収められた長期記憶とが照合され、シータ波と呼ばれる周波を放ち、長期記憶として定着化するものを選り分けているのです。私達がおかしな夢をみるのは、海馬が断片化された記憶を消したり残したりしているからだとされる。
睡眠が記憶の定着にとって有効な理由にはもう一つあります。
それは、「情報の衝突による干渉」です。
私達が起きている時は、色んなものを見たり聞いたりして、次々と新しい情報が入ってきます。海馬にしてみれば、次々と情報がはいってきて、あわただしくなり、ゆっくり記憶の整理ができません。
起きている日中は、どうしても脳内の情報同士が干渉して、重要なものと重要でないものとを仕分けする前に、後から入ってきた情報が優先的に海馬に残されるという現象が起きてしまうのです。せっかく覚えたはずのことが、後の情報でつぶされてしまうイメージです。
ですが、睡眠中は、その外部の情報がはいってこないため、干渉は起きず、海馬にとってもゆっくりと整理ができるのです。
寝てしまうと、せっかく覚えたことを忘れてしまいそうだと思いがちですが、実は、覚えた後すぐに睡眠をとった方が、より記憶は定着するのです。
そうなると、「徹夜で覚える」なんてことが、いかに非効率であるかが理解できます。
要は、日にちをまたいでおこなう「分散学習」が記憶にとって有利な理由として、間に「睡眠」を挟むからです。そして、睡眠時間は、6時間を確保するのが最も記憶の定着にいいとされている。
「記憶のルール」は全ての記憶法の土台
さて、記憶のルールに基づく記憶法。振り返ってみると、何も特別なことはないという事に気付かれたと思います。
ポイントとなるキーワードは、「反復とそのタイミング」「睡眠時間の確保」。たったこれだけのことに集結されます。
しかし、この基本的な「記憶のルール」を忘れ、さもある記憶術や記憶法だけに走ってしまう方も多いのではないでしょうか?
どれだけ優れた記憶法も、記憶の定着を司るのは「脳」。脳が覚える仕組みに従う基本的なルールは、記憶法や記憶術の土台です。
記憶のルールを理解しないと、無理に詰め込むだけで、そのほとんどが長期記憶へと移行されません。
記憶法や記憶術はさまざまですが、実は上手に使い分ける事で非常に有効だと証明されています。それに関しては否めません。
有名なものには、「ペグ法」「語呂合わせ」「メモリーツリー法」「メロディ記憶法」・・・など、さまざまですが、これらの有効とされる記憶術は、記憶のための「手がかり作り」を仕組み化し、技術化したもの。
病院で処方されるくすりは、医師の指示に従って、定められた量と、服用する時間を守らないと、効力を発揮しないまま排泄されてしまいます。これと記憶の定着は同じだという事です。
今回で当テーマは終了です。ここまで読んでくださった方は、きっと他人がきづかない、記憶に関する必須の技を知る事ができたことでしょう。