人の隠れた「欲しい」を見える化するには?

人の隠れた「欲しい」を見える化するには?

かつて、国内では携帯電話の市場が急成長していった時期があった。

改善・改良のセンスに優れた国内メーカーは、小さく、軽く、使い勝手はどうか、少しでも安くできないか、…。

その努力は繰り返され、ユーザーの要望を汲み取り、「つながりやすい」「通信速度が速くなる」「音が良い」といった改良がひたすら続いた。

当時、世界が絶賛する日本の誇るべき技術力は、海外の携帯電話と比べると独自に進化した機能がたくさんあった。

スマートフォンがモバイル市場を奪った理由

例えば、「ワンセグ」「おサイフケータイ」「絵文字」は、海外にはない日本独自の技術なのです。

ガラケーそんな日本のメーカーが一生懸命作っていた携帯機種は、「ガラパゴスケータイ」を略して「ガラケー」と呼ばれるようになり、売上は瞬く間に急上昇した。

そんな折、これまでのモバイル通信とはまったく違う次元で競争しようというプレーヤーが、いきなり登場してきた。

2007年にアップル社からスマートフォン「iPhone」が発売された。

発表の際に、スティーブ・ジョブズ氏が語ったのは、「電話機をもう一度発明する」ということ。発売後、一気に市場スマートフォンが変わったわけではない。

しかし、新たな機能やアプリ、サービスが次々に提供され、隠れていた「つながりへの欲求」が満たされたことで、モバイル通信市場の主役はスマートフォンが奪い、気がつくと10年経った市場はスマホ一色になっている。

なぜ、モバイル市場はガラケーからスマホにシェアを支配されてしまったのか? ガラケーは、顧客の要望どおりに改良し続けた。ユーザーが欲しいと思われる機能を次々と開発し、ひたすら改善を繰り返したはずだが・・・・

今あるものの延長線上で競い合っていても「だいたい、いいんじゃない?」以上の評価は得られず、最後は価格競争で消耗戦に陥り、疲弊するのがオチ。

このスマホとガラケーの対比から、あることに気づきます。

ガラケーは、「欲しいと思っている人」に欲しいモノを提供する市場。それに対して、スマートフォンは、「欲しいと思っていない人」を「欲しいと思っている人」に変えた市場。

顧客の要望からイノベーションは生まれにくい

「こんなのがほしい」という顧客の要望は、誰もがしっていて、その感動は薄く、革新的なイノベーションとは表現しがたいものがある。それに、一般庶民が思いつくことはやはり、庶民レベルのことで、驚嘆するようなアイデアを要望するのはナンセンスといえる。

人は、自分が本当に欲しているモノが何なのかをハッキリとわかっているわけではない。誰かに「こうしてください」とお願いして、要望通りにしてくれたとしても、精々「ありがとう。助かります。」で、特別な感動があるわけではないはずです。

例えば、会社で上司に指示された通りにこなしたところで、特別な評価を下される事はないはずです。商品開発も同じで、ユーザーの要望通りに提供した「いいモノ」が必ずしもユーザーの「欲しいいモノ」とは限りません。

いいモノを作ってもヒットしない。お客様の声を聞いても売れない。今はそんな時代。

誰もが気付かないでいる「隠れた欲求」を捉えた、全く新しいモノを作り出すことが必要なのだろう。

革新的なヒット作を生み出すためには、先に述べたように、「欲しいと思っている人」を狙うことよりも、「欲しいと思っていない人」を「欲しいと思っている人」に変えること。そちらに重きを置くことでしょう。

そのためには、まず「仮説」を持つことから始、 「実はこのような欲求があるのではないか?」という仮説をたててみる。

その仮説が正しければ、これまでのファネル1)ファネル(漏斗)とは、広く集客したうえで、ふるいにかけられた見込み顧客が、検討・商談、そして成約へ流れる中で段々と少数になっていくことをいう。 その様を図にすると、漏斗で濾した様子に似ているところからそう呼ばれている。 一般に、商品・サービスの購買過程をフェーズ分けしたものをモデル化したものである。の入口に存在していなかった「欲しいと思っていない人」を「欲しいと思っている」人に変えられます。

そして、その流入数を大きく増加させることで、最終的にクロージングする人のボリュームも一気に大きくすることができます。

ヒットの秘密は「隠れた欲求」

ネスレ日本のチョコレート「キットカット」 はご存じだと思います。

チョコレート菓子の「キットカット」がなぜ、「受験応援キャンペーン」を毎年開催しているかしってるだろうか?

かつてのキットカットは、「Haveabreak,HaveaKitKat」というコピーを使い、ブレイク=ちょっとした「息抜き」に合う商品、というコンセプトでコミュニケーションを行っていました。

ターゲットは高校生。彼らにとって、キットカットは知ってはいるものの、「自分たちのブランド」という意識は無いに等しいものでした。

そこで新たに編成されたキットカットのチームは、高校生を対象とした調査を行い、ある仮説を立てた。

「受験・恋愛・友人関係の悩みで、毎日ストレスだらけ。でも、キットカットをパキッと折ると、心がふっと軽くなり、そのストレスから解放される」中でも受験のストレスは最も大きなもの。

そのようなストレスに対して、「ウェハースにチョコレートをコーティングし、それを真ん中でパキッと気持ち良く2つに割ることができる」という「ブレイク」により、「心がふっと軽くなりストレスから解放される」という気持ちにつながるはず。

この仮説を見てあなたはどう思うだろうか?

受験生である彼らの一番の要望は、合格です。 しかし、受験生は様々な「ストレス」を抱えているということです。 友達のこと、親との関係、将来の不安、それに加え合格というノルマは相当大きなストレスであることはまちがないでしょう。

そんな受験生の抱えるストレスを彼らは、どうに解決しようとも何もできず、ただ頑張る事に懸命。それは、休憩時間さえも心が休まることのない苦痛です。

そこでネスレは、ブレイクを、ただの「休憩」ではなく、「ストレスからの解放」と位置付けてあげることで、彼らを精神的にサポートすることができるのではないかと考えました。 「キットカット」をパキっと食べることで、心が一瞬ホッとして、前向きな気持ちになって頑張れる。「キットカット」でそんなお手伝いができるのではないか。と。 それは偶然にも「きっと勝つ」と意味合いが重なり、そこから受験生応援キャンペーンが始まったとされます。

決してキットカットに受験生のストレスを解消する効果があるとはいいきません。

要は受験生の「隠れた要望」にフォーカスしたところに成功したということです。実際受験生の立場に立たないとその感覚はとらえにくいかもしれませんが、まさに、「欲しいと思っていない人」を「欲しいと思っている人」に変えた成功事例ではないだろうか。

References   [ + ]

1. ファネル(漏斗)とは、広く集客したうえで、ふるいにかけられた見込み顧客が、検討・商談、そして成約へ流れる中で段々と少数になっていくことをいう。 その様を図にすると、漏斗で濾した様子に似ているところからそう呼ばれている。 一般に、商品・サービスの購買過程をフェーズ分けしたものをモデル化したものである。