本屋さんの「本」が定価で販売しているワケ

本屋さんの「本」が定価で販売しているワケ

表示価格の違い

定価

「定価」とは、その名の通りで定められた価格。小売店で値上げで高く売る事も、値引きで安売りも一切認められていない全国同一価格をいいます。

例えば、新聞や新刊書籍などの本は、出版社などのメーカーが小売業者に対して、書籍などの商品の小売価格の変更を一切許容させない「定価」となっている。

メーカー希望小売価格

では、「メーカー希望小売価格」とは、メーカーが小売業者に対して「このくらいの価格で販売してほしい」という希望を表示したもの。実際にいくらで売るかは小売業者に任されています。

オープン価格

さて、2つの表示価格に対して、「オープン価格」とは、メーカーが販売価格を提示せずに最初から小売業者に販売価格を一任したものです。メーカーが設定するのは卸し価格だけで、実際にいくらで売るのかというのは小売業者に拘束力がある。

オープン価格が普及した背景

一昔前まではメーカーの発表する価格は「定価」のみでしたが、時代とともに「メーカー希望小売価格」、そして「オープン価格」の表記が多く使われるようになっていった。その経緯について見てみよう。

そもそも「定価」とは、前もってメーカーによって決められた販売価格のことを指し、値上げや値下げは認めないことが前提となっている価格設定のことを指します。

しかしながら、この「定価」設定は販売価格を卸売業者や小売店の事情に関わらず、決まった販売価格を強制するという解釈が取られるようになり、「独占禁止法」に触れるとされるようになった。

スーパーマーケットや家電量販店では「激安セール!」「超特価!」などは当たり前のように見かけます。

市場には誰もが売り手として参加でき、互いに競い合いながら、商品を自由に販売できる状態を「自由競争」といいます。自由競争市場は市場経済の基本であり、これにより消費者はより質のよい商品をより安い価格で買うことができる。

しかし、自由競争が進むと企業やメーカーによる「私的独占」が勃発することがある。

私的独占とは、例えば「メーカーA」・「メーカーB」・「メーカーC」・「メーカーD」の4社があるとします。

「メーカーA」と「メーカーB」が密かに話し合いをして、邪魔な存在である「メーカーC」を市場から締め出したり、新たな参入者「メーカーD」を妨害して市場を独占しようとする行為をいう。

市場を独占している企業が、新規参入してきたライバル企業等を排除するため、取引先企業に対して取引量に応じてリベート(売上割戻金)を出すと、取引先企業ではその企業の商品しか取り扱われなくなり価格や品質に優れた新規参入者が締め出されてしまいます。

市場を独占した企業は競争相手がいないので、消費者により安く、より良い商品を売ろうというような企業努力をしなくなります。

それでは消費者のメリットが失われることになりますので、このような「私的独占」は禁止されています。

このような私的独占行為を防止するための法律が「独占禁止法」です。

そのためメーカーに拘束力がある「定価」を表記することは一部(新聞や書籍)を除いて無くなり、そこで現れたのが「メーカー希望小売価格」です。

「メーカー希望小売価格」は、メーカーが小売店に対して「これくらいの価格を想定して発表しました」という、定価ほどの拘束力を持たない、あくまで「希望」の価格を指しています。

そのため実際の販売価格は小売店に一任されており、メーカー側でその価格をコントロールすることはできません。これなら小売店にとって、売れ行きのいい商品なら値上げ販売もでき、売れ残りそうな商品を値引きで売る事もできます。

しかしここでもまた問題が発生します。

「メーカー希望小売価格」を表記してしまうことによって、ある“ トラブル ” が相次いで報告されるようになった。

近年ディスカウントが増えた結果、「メーカー希望小売価格」から大きく違った価格で販売されるようになってしまった。

例えば、以下の2つの価格表示を見てみよう。

「メーカー希望小売価格:1万円」

「希望小売価格2万円から50%オフ」

どちらも同じ希望小売価格1万円ですが、後者の価格表示は、いかにも「お得で激安」とう錯覚を消費者に与えてしまいます。

これは、1980年代頃から家電業界で値下げ競争が激化したときに問題視された、「二重価格表示問題」と呼ばれるものです。これが問題になり、2000年に公正取引委員会から「製品の価格を実際の市場価格に近づける努力をすること」との通達が行われます。

つまり、「消費者に商品を販売する価格表示に、実際よりも格安であるかのように見せ、混乱させてはいけない」という警告がなされたわけです。

これを受けて、メーカー側も最初から市場に任せる「オープン価格」を採用するようになったとされる。

本が定価で販売している理由

企業やメーカー側が決めた価格で販売する「定価」の記載は、小売業の自由競争を阻む行為で「独占禁止法」に反するものだとされ、価格は小売業が決めるものだとされている。

しかし、本屋さんでは上記のような「安売り」や「SALE」などのいわゆるセール祭りの光景を見かけることはありません。

※ここでいう本屋さんとは、新刊書籍を販売している店舗のことで、中古・古本屋さんではありません。

なぜ、本屋さんは特価セールをしないのでしょうか?

実は、安売りしないのではなく、「定価」を義務付けられた法律があるからです。

この法律を、「再販価格維持制度」といいます。

再販価格維持制度とは、簡単に言うと、「本屋さんが値段を決めて販売してはいけません」「出版社が決めた定価で販売してください」
というものです。

しかし、それでは「独占禁止法」に反するのではないか?という疑問が浮上します。

実は、「本」などの出版物はこの法律からなぜか除外されている。

その理由は、「全国どこでも同じ価格で買う事ができ、だれもが平等に楽しむことができるようにするため」。

例えば、本屋さんの多い都市部で自由競争が激化し、新刊書籍が安売りされるとします。すると、「都会で買った方が本が安い」となる。

一方、本屋さんの少ない田舎では、競争相手がいないため価格競争を強いられることもないので、値引きなしで販売されます。となると、「田舎で売ってる本は高い」となり、いわゆる地域格差が生じてしまいます。

本をはじめとする著作物は「文化的な価値」があるとされる。定価販売により地域格差をなくし、全国どこでも同じ価格で本を購入でき、だれもの出版物に接する機会を均等化する必要がある。

つまり、「どこに住んでいても平等に本を買えるようにしよう」といった理由で、本屋さんが値段を決めて販売してはいけない、出版社が決めた「定価」で販売するという「再販価格維持制度」が定められている。

考えてみてください、もし仮に「再販価格維持制度」がなければ、安売りしている都会の本はよく売れるでしょう。

しかしそうなると、安売りできない田舎の小さな本屋さんがどうなるか?田舎暮らしの方にとって本の購入機会を失ってしまわないか?
誰もが平等に本に触れる機会を失う可能性が生じてしまいます。

さて、街の小さな本屋さんを守るためでもある「再販価格維持制度」ですが、昨今、書店の廃業・閉店の波が街の小規模書店だけでなく、地域の中核書店にもさらに大型書店にまで押し寄せている。

その理由は、インターネットの普及で本屋で書籍を買う行為が減少していることや、店主が高齢になり、体力的にも長時間、店を開けることが難しくなるケースがほとんどだと指南している。

さらに追い打ちをかけてきたのが、キンドル等の「電子書籍」。電子書籍は「再販価格維持制度」が適用されないからです。

なぜか?電子書籍はデジタルデータなので、本屋さんのような「置き場所」を取りません。無制限にネット上に置くことができ、世界中のどこからでも、アクセスできる。

そう考えると、「全国どこでも同じ価格で買う事ができ、だれもが平等に楽しむことができるようにするため」という再販価格維持制度の概念が通用しません。再販価格維持制度は物理的な本のためのもので、デジタルデータの電子書籍にとってはまったく無意味なのです。

そこで、出版業界は、紙の本と電子書籍の価格バランスが崩れるから、「電子書籍にも再販価格維持制度の適用」を求めた。

しかし、公正取引委員会は、再販価格維持制度は「物」を対象としていて、「情報」は対象としていないと判断。

つまり、「電子書籍は再販価格維持制度に該当しない」という見解を発表した。