人を惹きつける文章とは、「結論」をどう表現するかで決まる

人を惹きつける文章とは、「結論」をどう表現するかで決まる

「人に伝わる文章」と、「人を惹きつける文章」とは違う。

ノウハウ、問題解決、情報提供など、これらのビジネス系ライティングの文章は、読み手が理解してこそのコンテンツです。

人に伝わる文章を書くためには、筋の通った文脈表現はさることながら、それ以前の大前提として「先に結論を書く」といった基本ルールが常套句だとされる。

冒頭から「結論」を述べる理由は2つ。一つは、最初に断定的な結論を述べられると、読み手はその論拠を知りたくなり、最後まで読んでもらえる効果がある。

もう一つは、冒頭でハッキリと結論を述べる事で、読み手のメンタルモデル(これは、こういうものだろう)を確立させ、その後の文章が何について書かれているのかが分かりやすくなるからです。

なので、読み手にちゃんと伝わる、「結局何が言いたいのだろう?」という迷いを生じさせないためにも、「結論から書く」ことは非常に有効なのである。

しかし、結論を先に述べるべきなのは、人にしっかりと「伝える」事を目的とした文章です。いってみれば、読み手を主体に構成された文章。

一方、書き手を主体とした文章といえば、新商品の紹介や主張など、書き手の言い分を読み手に伝えたいとなると、しっかりと伝える以前に、読んでみようと思ってもらえるだけの惹きつける要素が必要です。

人を惹きつける文章とは、「続きが読みたい!気になる!」など、ワクワクさせるストーリー性のある文章をいう。

そして、読み手をワクワクさせ、最も伝えるハイライトは、冒頭で先に述べてしまったりはしない。

そう、「結論」は先に書かないで、最後に述べる事がポイントなのだ。

人に伝える文章は先に結論を述べるべきだが、読み手の心を動かす惹きつける文章においては、早々と結論を述べてはいけないのです。

読み手を惹きつける「ゴールデンサークル理論」

読み手を惹きつけるためには、先に「なぜこうしたのか」という書き手の思いや信条を伝える事が重要。

これは、書き手の信念やコンセプトについての感情を先に伝える事で、読み手は書き手の信条に共感し、感情を揺さぶることで惹きつけられやすいという理由です。

例えば、新商品のプレゼンをする際、いきなり新商品を紹介しても、聴衆の心は動きません。むしろ、商売根性丸だしで、胡散臭ささえも感じたりします。

なので、先に話すことは、商品名という「何を」話すのではなく、「なぜ」新商品を開発したのかなどの意義や信念をスピーチしなくていけない。

この新商品を開発するまでのエピソードや、何を目的に、なぜ開発するに至ったのかなど、感情そのものを伝えることで、聞き手の心は動かされるものだ。

実は、これは「ゴールデンサークル理論」といって、マーケティングコンサルタントのサイモン・シネック氏が「TED Talks」でプレゼンした「優れたリーダーはどうやって人の行動を促すか」の中で提唱された理論です。

「ゴールデンサークル理論」に関する詳しい内容は以下の記事にて綴っておりますのでどうぞご購読ください。

「何をどうやるか」より「なぜやるか」の動機付けをする伝え方

さて、今回のテーマは「人を惹きつける文章」です。

先に概念や結論を述べてしまうのではなく、「どんなハイライトが待っているのか!」読み手をワクワクさせることが肝。

そのためには、伝えるためのビジネスライティングの文章とは違って、「結論は先に述べない」ことが第一のポイント。

そして、冒頭で伝える事は、「なぜ」を思いや信条をつたえる書き手の感情を述べる事で、読み手の心を動かすことが、第二のポイントでした。

さぁ、読み手は待ち受けているのは、待ち焦がれる「結論」だ。どういったエピソードを繰り広げ、結論という「オチ」を述べようか?

スティーブ・ジョブズ氏の人を惹きつけるプレゼン

ここで、非常に参考になるプレゼン動画があります。

その動画とは、スティーブ・ジョブズ氏による「初代iPhone」のプレゼン動画です。素手のご覧になった方もいるでしょう。なにせ、彼のプレゼンは、聞き手を惹きつける卓越さは、鳥肌級といえるからだ。

百聞は一見にしかず。早速ご覧になってもらおう。ご覧になっていただくのは、彼が「名前は、iPhone。」という言葉を言ったところまでです。新製品「iPhone」という結果を述べたとこまでご覧ください。約3分です。

ジョブズ氏のスピーチに何を感じたでしょうか。会場は何度も拍手喝采がおき、彼のスピーチに心が動かされているようだ。

では、彼が「名前は、iPhone。」という結論を発するまでのエピソードについて、どこに聞き手を惹きつける要素があるのかを見てみよう。

2年半、この日を待ち続けていた。

彼は、この言葉でプレゼンの幕を開けた。

普通、新商品のプレゼンでは、始めに「新商品の○○についてご紹介します」というように、「何を」プレゼンするかを告げるものだ。

しかし、ジョブズ氏は冒頭から、「新商品のiPhoneについてのご紹介をします」とはいってません。結論は先に述べたりはしていない。

今からプレゼンする「iPhone」のために私たちは準備をしてきた。というiPhoneを開発するまでに至った2年半前から今日までの「経緯」に対する思いを伝えた。

このジョブズ氏の思いは、聴衆の方たちの感情を揺さぶり、彼の思いに共感する。

会場内の人達は、この一言だけでも「2年半も前から、今日のために準備をしてきたのか?これはすごい話が聞けそうだ」と、何か特別なことが起こりそうなワクワクした予感をしたはずです。

そして、ジョブズはわずかな間をとって、舞台中央にゆっくりと歩みを進めながらスピーチを続ける。

数年に一度、すべてを変えてしまう新製品があらわれる。それを一度でも成し遂げることができれば幸運だが……。

アップルは幾度かの機会に恵まれた。1984年、Macを発表。PC業界全体を変えてしまった。

2001年、初代iPod。音楽の聴き方だけでなく、音楽業界全体を変えた。本日、革命的な新製品を3つ発表します。

PC業界全体を変えた「Mac」や音楽業界全体を変えた「iPod」という革新的な商品に並ぶほどの新たな革命的な製品を今日、彼は今から発表すると伝えた。しかも3つもあるという。

何何??それはどんな商品なのか?!会場の聴衆はこんな気持ちで身を乗り出し、一言一句を聞き漏らすまいと耳を澄ませたことでしょう。

そして、その「3つの新商品」を発表しはじめた。

1つめ、ワイド画面タッチ操作の「iPod」。2つめ、「革命的携帯電話」。3つめ、「画期的ネット通信機器」。3つです。

さて、彼が紹介した3つの新商品とは、「iPod」「革命的携帯電話」「画期的ネット通信機器」だといっています。

もうお分かりだと思いますが、実はこれは「iPhone」が持つ3つの機能についていったのです。

「iPhone」という製品名を一切口にせず、その「3つの優れた特徴」をあえて、「3つの新商品」に置きかえて発表した。

そして彼は、紹介した「3つの新商品」を何度もスライドを変えながら何度が繰り返します。

おわかりですね? 独立した3つの機器ではなく、ひとつなのです。

3つの新商品ではなく、実は、3つが1つになった画期的な新商品なのです。

そして、ようやく「iPhone」という結論を述べた。

注目すべきは「おわかりですね?」という言葉。まるで、聴衆の方たちはジョブズ氏の「名前は、iPhone。」を発することを知っていたかのように。

結論に至るまでの「チラ見せ」効果

いかがでしょうか?会場の盛り上がり具合からして、かれの結論に至るまでのエピソードに心を惹きつく要素があることに気付かれたはずです。

では、なぜジョブズの「iPhone」という結論を発表するまでのスピーチに聴衆はワクワクさせられたのでしょうか?

それは、ジョブズは、「iPhone」という新商品をスピーチの中で、“ チラ見せ ” したからです。

そして、聴衆は、なんとなくわかっていた。「iPod」「革命的携帯電話」「画期的ネット通信機器」という3つの商品が1つになった度胆を抜く新たな製品が発表されることをなんとなくわかっていた。

それはつまり、ジョブズが「iPhone」をあえてチラ見せすることで、聴衆の方々は「今か今か?!」といわんばかりに、ハイライトシーンを待ち伏せているのです。

これは、子供のころに見たヒーローが悪役をやっつける場面をわかっていながらそのシーンになると「待ってました!」とばかりに気持ちが沸くのと同じでしょう。

結論は最後に公表する。だが、そこに至るまでのエピソードの中で、「チラ見せ」する。ここがジョブズのプレゼンの魅力なのだ。

人間は完結しているものよりも、完結していないものに惹かれる。完結していないことで「完結したものを知りたい」という欲求が生まれる。

これを心理学では「ザイカニック効果」という。

TV番組のCM前に「CMのあと、ついに真実があきらかに!」というのも同じです。チラ見せして「続きが知りたい!」という欲求を刺激しているのです。

まとめると、人を惹きつける文章とは、冒頭で、書き手の信条を伝え、読み手の感情に揺さぶりをかけ、共感してもらうことで「読んでみよう」という気になってもらう事が先決。

最も重要なのは、早々と結論を書いてしまうのではなく、「結論は最後の最後に述べる」ことで、答えが気になる、続きを知りたくなる効果を募らせます。

そして、その答えとなる結論を見せるまでの途中のエピソードで、わざと「チラ見せ」する事で、読み手のワクワク感を煽ることができるのです。