「見込み客を集める商品」と「儲けになる商品」の使い分け戦略

「見込み客を集める商品」と「儲けになる商品」の使い分け戦略

「客寄せパンダ」って聞いたことはありますか?

動物園でかわいいキャラが確立されている、みんな大好きな「パンダ」。

どこに行っても人気の動物トップ5があるのなら、必ず3位以内には入ってくるパンダさん。

パンダさんはどうしてこんなにも「かわいい」って愛されキャラが成立しているのだろうか。

まず、頭が大きい。ふつう、人間を含め、動物は成長ととも、胴や足も伸びて相対的に頭の比率が小さくなってくるのですが、パンダの場合は頭の比率が子どものときとほとんど変わらないでいる。

だけど、頭がでかい=カワイイというよりも、永遠の「赤ちゃん体型」にみえることがカワイイ×カワイイになっているのかもしれません。

さて、マーケティング感覚でいうと、パンダさんは動物園の集客効果抜群のメインキャラ。

「客寄せパンダ」とは、パンダのような高い集客能力を持ち、見世物やイベントなどでの「売り」となる存在を表す造語です。

「一枚看板」や「看板娘」、「招き猫」とほぼ同じ意味だと思ってもらえればいいでしょう。

ですが、「客寄せパンダ」という言葉は、単なる「客集め」だけの存在と認識されやすく、若干揶揄や皮肉のニュアンスがあり、どちらかと言うと否定的な意味合いとして扱われることがあるようです。

さておき、商売をするうえで、最も大事なのは「集客」です。

集客方法は多岐にわたるが、マーケティングでは「客寄せパンダ」のような高い集客能力を持つ商品やサービスを利用する手段があります。

それが「フロントエンド・バックエンド」という概念です。

今回は、「フロントエンド・バックエンド」戦略とは何か、その基本的な手法について簡単に説明しましょう。

フロントエンド・バックエンドとは

フロントエンド・バックエンドは、正確には「フロントエンド商品」と「バックエンド商品」の2つに分け、それぞれの役割と目的は異なります。

「フロントエンド商品」とは、お客さんを集める事を目的とする商品をいい、大抵は低価格に設定し目玉商品として扱われる。

「バックエンド商品」とは、儲け(利益)を出すことを目的とした商品をいい、集客したお客さんに対して本当に売りたい商品として扱われる。

つまり、客集めの商品(フロントエンド)で集客し、儲けがでる商品(バックエンド)で利益を最大化させるという戦略という。

分かり肉かもしれないので、「お肉屋さんのコロッケ」で例えて理解していただこう。

お肉屋さんはその名の通り、食肉を専門販売している精肉店です。

昨今、街の小売業である精肉店は今では大手の食品スーパーにシェアを奪われ、価格では到底太刀打ちできません。

二十年前と比べる店舗数が半減しているともいわれる業界で、月商平均が全国平均では500万円に満たないお店が多数を占めるともいわれている。

繁盛店に共通することは「お客様のお目当て」があることです。わざわざ、お客様が足を運ぶような当店ならではの「客寄せパンダ」を考えなくてはならない。

それなら、主力のお肉を使って地元で何か面白いことはできないか?と考えます。

そこで始めたのが、「お肉屋さんの揚げたてコロッケ」。

お肉屋さんのコロッケは昔から存在するが、今では出来合いのモノは多忙とする主婦層にも需要が見込めそうです。自店の肉を使える訳ですから食材の有効活用にもなる。

そして、揚げたてのコロッケを目玉とするがやはりコロッケ単体では限界があるため、次は食肉を材料としたハンバーグとサンドイッチの店頭販売を開始した。

さらに、店内や店頭周辺に、揚げたてのコロッケや作りたてのハンバーグとサンドイッチをその場ですぐに食べる事ができる飲食スペースを設けます。

見事に当たり、瞬く間に一人、また一人と来店され、口コミ効果も広がり、気づけば行列を作るまでに成長した。

さて、このお肉屋さんは集客のために、精肉ではなく「揚げたてのコロッケ」や「作りたてのハンバーグ」「サンドイッチ」は、お客さんを集める事を目的とする客寄せパンダです。

比較的安くて、とりあえずお客さんに足を運んでもらえそうな集客を目的とする商品が「フロントエンド商品」です。

しかし、フロントエンド商品の「揚げたてコロッケ」で集客に成功するも、実際の儲けはどうか?

仮にコロッケ一つの売価を100円とすれば、肉やパン粉、油などの原材料費や挙げる人の人件費等を差し引けば利益は薄利となるのは容易に想定される。

それもそのはず、コロッケはもともと集客用で儲けを出すための商品ではないからです。ハンバーグやサンドイッチも同じです。

お肉屋さんは惣菜店ではなく、精肉店。利益を上げるためには、メインの「食肉」を買って頂く必要があります。目玉とする松坂牛とか、東京エックス豚などの銘柄牛を売ってこそなんぼです。

揚げたてのコロッケを、設置した飲食スペースで食べているお客さんは、「このコロッケおいしい!家でも作っていつでも食べたいね~」と思ったりする。

そこで、目に付くところに「揚げたてコロッケで使っているお肉はこちらです」というPOPを掲示しておくと、「へ~、このコロッケは○○牛で作っているのか~、一つ買っていこう!」

揚げたてコロッケでお客さんに、来店してもらい(フロントエンド)、それをキッカケに「食肉」を買って頂く流れが成立します。

もうおわかりですね。揚げたてコロッケの原料となる食肉は本来売りたい商品であり、利益率も高い「バックエンド商品」です。

※この例えはあくまでフロントエンドとバックエンドを説明するための架空の事例です。実際の商売はこれほど単純なものではないでしょう。

儲けにはならないが集客効果を発揮する「フロントエンド商品」、実際利益を確保するのはメインである「バックエンド商品」。

これが「フロントエンド・バックエンド」戦略の基本的な考え方です。

フロントエンド商品で勝負をかける

フロントエンド商品とは、最初に見込み客に提供する商品または、サービス。ポイントは、本命であるバックエンド商品の一部を体験または利用していただき、その商品やサービスの魅力と価値を伝えるキッカケを与えることです。

代表的な例として「無料体験」や「資料提供」があります。例えば、子供が受験対策として学習塾に通う事を決めたとします。

中学受験でも高校受験においても、塾選びは重要。受験が終わるまで通わせ続ける費用、通塾と授業を受ける時間を考えると、慎重に選びたいものです。

授業形式や料金体制、入試対策のカリキュラムになっているのかなどの疑問があり、あっさりと決めかねるのは当然です。そこで、自宅に近くて評判のいい○○学習塾のホームページを確認したとしましょう。

「2週間の無料体験を開催!」というキャッチコピーを目にすると、少し気持ちが揺らぐはず。

さらに、「まずは資料請求(無料)から!」「入力フォームまたは、お電話でもお気軽にお問い合わせください。」とあれば、念入りに比較検討したい方でも試してみようと思うでしょう。

では、この「○○学習塾」の立場で考えてみます。

学習塾にとっての最終目的は生徒の「入会」です。しかし、上記の事例のようにすぐに入会の申し込みをして頂く方は稀。

見込み客にとって当学習塾のことをほとんど知らない状態ですから、無料体験や資料提供など簡単に試せる提案を施すことで「入会の申し込み」というハードルを下げて見込み客の囲い込みをします。

この「無料体験」や「資料提供」がフロントエンドです。

集客効果抜群の「100円マック」のフロントエンド戦略の秘密

つづいて、フロントエンド商品の事例をもう一つ見てみましょう。

マクドナルドで知られている「100円マック」。「100円マック」は、まさしく、フロントエンド商品。

マクドナルドが本当に売りたい商品は「100円マック」ではなく、バリューセットやハッピーセットなどの高単価商品です。

なぜ、激安100円のハンバーガーが必要かというと、それによって沢山の見込み客を集められるから。210円だったハンバーガーを100円に値下げしたのは1994年のこと。この思い切った値下げによって、販売数が一挙に20倍も増えたとされる。

フロントエンド商品は、集客を目的とするため、利益を出すための商品ではありませんが、赤字になるようなフロントエンドでは本末転倒になりかねません。

調べたところ、ハンバーガーのコスト・利益は以下の内訳になっている。

原材料費:約60円、社員人件費:約40円、店舗賃借料:約30円、その他販売管理費:約60円で計190円。210円で販売したとして営業利益は、20円(210円-190円)。

総コスト190円のハンバーガーを100円で販売するとどう考えても赤字です。100円マックというフロントエンド商品で集客に成功しても、バックエンド商品で確実に儲けを出さないと赤字になるのは必至。

しかし、「100円マック」には赤字を出さないカラクリがある。その秘密は、固定費と変動費だ。

変動費とは、ハンバーガーの原材料となるパンや肉などの経費で、売り上げに比例して動くコストのこと。固定費とは人件費・店舗賃借料など、必ず発生する決まった額のコストです。

仮に、ハンバーガーが1個売れていたものが3個になったとします。当然、材料となる変動費は比例して3倍になる。

しかし、人件費や店舗賃借料などの固定費は、1個であろうと3個であろうと変わりません。(人件費に関しては、オペレーション的にこなせると想定します)

つまり、ハンバーガーを多く売れば売るほど変動費率は下がり、ハンバーガーの総コストも下がる。というカラクリなのです。

実際、100円という半額以下の価格に消費者が敏感に反応し、販売数量が爆発的に増加し、1個当たりの固定費は大幅に圧縮し、営業利益は約3倍まで増加したとされます。