トラブルが起きた原因を追究する「どうすれば分析」

あなたの職場でも、小さいことから大きい事まで、いろんな問題があったり、トラブルが起きてしまったりすることは、日常茶飯事かもしれません。
あなたは、問題が起きた時、どう対処していますか?
とりあえず、「どーしよどーしよ」って、あせりますか?
それとも、「なんでだよ~、さいあく~」って、へこんでしまいますか?
仕事ができる人ほど、そんな状況に立たされたとき、まずは冷静になり、今すぐすべき対処にフォーカスすることなのでしょう。
何が起きても冷静にいられる人って、いかにも「コイツできるな」って感じがするよね。
トラブルが起きた時に、まずはするべきこと
では、仕事でトラブルが起きてしまったときに、最初に考えるべきことは何でしょうか。
おそらく大抵の人は、まっ先に「どうやって処理するか」を考えてしまうかもしれません。間違ってはいませんが、実はそれよりも先に考え、判断すべきことがあります。
それは、「自分の力で処理できるのかどうか」という判断です。まずは、自分で対処できる事なのかどうかを即座に「判断」することが先決。
「これは自分の手に負えない」あるいは「自分で処理するよりも、上の人の力を借りたほうが良さそうだ」と判断したら、すぐに上司にトラブルの報告しなくてはいけない。
判断に迷ったら、その時点ですぐに報告して、上司の指示を被ることが大切だったりする
ところがです。新人さんに多いのですが、その判断をせず、とにかく自分で処理しようとしてしまうケースが多くあります。
特に、自分が犯したミスでトラブルを起こしてしまった時、自分でなんとかしないといけない、と思い込み、なにもなかったかのように必死に処理しようとします。
小さなトラブルであれば、それで問題ないかもしれないが、大きなトラブルの場合は、自分でなんとか対処法を見つけようとして、いたずらに時間が経ってしまい、その結果、さらに大きなトラブルになってしまうということにもなりかねない。
いかなるトラブルも、1秒でも早く対処法を見つけ、それを処理しなければならないのに、「自分でなんとかする」という思いがその妨げになってしまうのです。
トラブルが起きたら、最初に、“ 自分で処理できるものかどうかを判断することが肝心 ”です。
「なぜ」を5回繰り返す
この言葉を聞いて、ピンとくる人は多くいると存じます。
日本を代表する自動車メーカーである「トヨタ自動車」が生産工場ラインでのトラブルや故障などが起きた際、「なぜ」を5回繰り返すことで、徹底的に原因追及する「トヨタ生産方式」の中の一つです。
トヨタが生み出した「問題の原因を特定するためには、 “ なぜ ” を5回繰り返すことで、当初は見えなかった問題の原因が見えてくる」というもの。
この「5回のなぜ」メソッドは、なぜなぜ分析ともいわれ、トヨタでは、これを習慣になるまで徹底させるといいます。
これは、問題の真の原因に到達し、問題の再発を防止するめに、非常に優れた方法です。
たとえば、機械が動かなくなったと仮定します。
「なぜ機械は止まったか」
「負荷がかかり過ぎて、ヒューズが切れたから」
「なぜ負荷がかかりすぎたのか」
「軸受部の潤滑が十分でないから」
「なぜ十分に潤滑しないのか」
「潤滑ポンプが十分くみ上げていないから」
「なぜ十分くみ上げないのか」
「ポンプの軸が摩耗してガタガタになっているから」
「なぜ摩耗したのか」
「ストレーナー(濾過器)がついていないので、切粉が入ったから」
少し、専門用語が飛び交っていますが、要は、導き出した要因に対して、さらにその要因を「なぜ、どうしてか?」を問い立て、根本的な原因を見つけるための手段。ということです。
あいにく、ここでは「トヨタ生産方式」に関する内容は割愛させていただきますが、この「5回のなぜ」メソッドは、工場ラインのみならず、あらゆる原因追及を方法として「なぜなぜ分析」という手法に置き換え、ざまざまなシーンで活用されています。
「なぜなぜ分析」とは、先に説明したトヨタ生産方式の「5回のなぜ」と仕組みは同じで、「なぜ」を繰り返しながら、問題を引き起こしている事象の要因を、論理的に出しながら、再発防止策を導き出す方法。
まるで、子供が親に「なんで?」「どーして?」としつこく聞いてくるように、「なぜ」を繰り返していく形で、発生原因を掘り下げていきます。
「なぜなぜ分析」はトラブルの原因追究以外にも多く使われるようになりました。
そして、仕事ができる人は、この「なぜ?」という問いかけが、習慣として身に付いていて、問題が起こると無意識レベルでこの「なぜ?」という思考が動き始めるとされます。
僕も、新人の頃はよく、上司に「なぜを考えろ」っていわれたりしていました。
たまに、なぜを5回繰り返せっていってた(トヨタかぶれの)上司もいたもんです。
その時は、自分で考えろよって思ったりしていました。3回までは、考えるから、残りの2回は、考えてくれよって思ってました。
ですが、実は、この5回のなぜをしろって言われていたことが、あらゆる原因を発見するための、大切なメソッドだったわけです。
ところで、あなたは、この上司のように「5回のなぜ」を現場で使った事はありますか?
実際、いないのではないでしょうか。どうしてトラブルが起きたのだろうか、と考える事はあっても、5回まで深く追求することはあまりしないでのはないでしょうか?
ところが、ところがです。
なぜを5回も問いかけることはしない、という人でも、5回、いやそれ以上の追求をしている人が、実は多かったりする。
しかもそれは、まちがった、「なぜなぜ分析」で、これでもかっていうくらいに、「なぜ?」「どうして?」を繰り返すのです。
何だと思います?
こんな「なぜなぜ分析」は間違い??
それは、犯人捜しをして、トラブルを起こした人が「なぜ、そんなことをしたのか?」「なぜ、そんなミスをしてしまったのか?」
というように、なぜなぜ分析を、「人」に対して繰り返し、設問のように問い詰めてしまう事です。
A君が資料へのデータ入力ミスをしてしまったと想定します。
その資料はすでに関係者の手に渡り、それを基にした作業が進んでしまっていることが判明した。すぐにも上司に報告しなければいけない。
そして、A君は、すぐさま上司の元に向かいました。
A君:「すいません。入力ミスをしてしまい、多方面にご迷惑をかけています。」
上司:「影響を最小限に留める対策は打ったのか?」
A君:「それはすでに打ってあります。」
上司:「ところで、なぜそんなことになったんだ?」
A君:「午後の作業で、少し集中力が落ちていたのかもしれません。」
上司:「午後は集中力が低くなることはわかっているだろう。なぜその対策ができていなかったんだ?」
A君:「眠気覚ましにコーヒーを飲んだりはしたのですが・・」
上司:「そんなくらいでいいのか?なぜもっと徹底的に対策を取らないんだ?」
A君:「問題なく業務はできるかと…」
上司:「その結果ミスが起こったじゃないか。なぜそんな姿勢で取り組んでいるんだ?」
A君:「いい加減な姿勢では取り組んでいません。」
上司:「では、ミスをすることによって、まわりにかかる迷惑をなぜちゃんと想定できていなかったんだ?できていれば、もっと慎重に業務を進めたはずだぞ。」
A君:「・・・・・」
さて、この会話をどう感じますか?
A君があなただったら、再発防止に対してやる気になる?ならないですね。むしろ、何か詰問をされているような感覚になったのではないでしょうか?
ミスをした原因を「お前が、お前が」というように、どんどん追い込まれていくような感覚、それがこのやり取りにはあります。
反省の気持ちはあるものの、このやり取りが進むにつれて、防衛本能が出てくるとともに、やる気さえもどんどん落ちていく。
上司の方は、再発防止の意味も含めて、「なぜ?」を繰り返しているのですが、この「人」に対する問い詰めをなんども繰り返し深堀ししてしまうと、やがて相手の「人格否定」が始まります。そして、再発防止どころではなくなってしまうのです。
もしかすると、あなたも「ミス」をしてしまった時、あなた自身にもんだいがあるのだといわんばかりに、問い詰められた経験はあるのではないでしょうか。
もしくは、あなたが部下にそうしてしまってはいないだろうか?
実は、これに近いやり取りは、会社や家庭を始め、世の中の至る所で行われているのが現状。
トヨタ生産方式の「5回のなぜ」は、世界に誇る素晴らしい習慣。ただ、この「5回のなぜ」を使う場面を、多くの人が勘違いをしてしまっているようです。
もともとこの「5回のなぜ」は、機械やシステムについての不具合などの真の問題を究明し、再発防止のために生みだされた考え方であって、それを、「人」に対して使ってしまっているのが、大きな間違いのもとなのです。
「なぜ、このようなトラブルやミスが発生してしまったのか?」という問いに対して、「なぜ、こんなことをしてしまったのか?」「トラブルが起きてしまったのは誰のせいなのか?」という、誰が、どうしてこんなことをした、という「人為的要因」ばかりにフォーカスしてしまうのです。
「なぜなぜ分析」は、責任追及ではなく、原因追及です。
では、どうすればいいのでしょうか?
逆に、どうして責任追及になってしまうのでしょうか?
そもそも「なぜ」の追求が、過去になっているからです。
トラブルやミスが起きたことは、過去の出来事です。なので、当然、過去にさかのぼって、その要因を捜すことが当然といえば当然でしょう。
ですが、そうなると、まっ先に「犯人捜し」をしてしまいます。
そして、先ほどのA君のように、その犯人が見つかると、A君に原因があるのだとされてしまい責任追及に終わってしまい、そもそも、「なぜ、このような事態になったのか?」という、原因追及ができません。
この時は、たまたまA君がミスをしたから、A君が問い詰められたのかもしれないが、トラブルを起こしてしまう根本原因を見つけることができないと、別の誰かが、ミスをする可能性があります。
なので、なぜの問いを「人」に向けても、再発防止対策にはならないのです。
「なぜ?」よりも「どうすれば?」
そこで、視点を変えてみます。
そもそも、「犯人捜し」をして、責任追及してしまうのは、なぜの問いを、過去に向けてしまうからこういうことになる、と考えます。
視点を未来から現在に持っていきます。やりたいことは、再発防止をし、未来をより良くすること。
未来に視点を持っていくと、「なぜ?」という質問はどうなるでしょうか?
そう、「どうすれば?」という質問になりますね。
過去にさかのぼって「なぜ?」という原因論で問い詰めるよりも、未来に視点をおき、「どうすれば?」という、目的論に考え方をシフトしてみることです。
そうすれば、誰がやったのかという犯人捜しをすることはありません。なぜなら、未来の事なので、だれがミスをするかなんてわからないから。
要は、起きてしまった事に対し、「なぜ?」を繰り返し分析することも有効だが、それを「人」に向けてしまっては、再発防止はできない。
なので、今起きてしまった事象に対して、未来の理想にどうすればなるかを考える事が大切。