コンビニの隣に同じチェーン店のコンビニがオープンする理由

セブンイレブンのわずか数十メートル先に別のセブンイレブンがオープンした。
コンビニエンスストアってどうしてこうも密集してオープンするのだろうか?
特に駅前となると、同じチェーン店のコンビニが「え?こんなに近くに?!」というくらいの距離で密集していることも。
一方、地域の商店街やイオンタウンのようなショッピングモールの専門店街は、様々なショップが隣接しています。
特にアパレルショップは扱う商品がほぼ同じともいえるショップが隣同士で並んでいることもある。だがそれでも、片方の店舗ばかりに顧客が集中することもなく、まんべんなく来店されているようです。
これは、その商店街やモール内で顧客を吸引する役割を果たしている知名度の高い大人気の店舗があると、その店舗の強力な顧客吸引力によって、他の店舗への顧客も増加させるを目的としているのです。
この商店街やショッピングモール内の集客装置となっている店舗の事を「核店舗(キーテナント)」ともいいます。
しかし、コンビニエンスストアの立地は、核店舗(キーテナント)の恩恵を受けるために隣接させているわけではないようだ。それに、同じチェーン店のコンビニは取り扱う商品も、販売におけるコンセプトも同じだ。
売れる立地の独占戦略
同じコンビニが近くにオープンするのは、一つの条件があります。それは、既存のコンビニが売れているかどうかです。
売れているということは、その売れているコンビニの立地が「集客効果のあるエリア」だということです。
考え方としては、同じコンビニが立ち並んでいるのは、集客効果のある立地をライバルに取られないため。
売れているセブンイレブンの隣に、ローソンがオープンすると、条件のいい立地を奪われ、顧客も流れてしまう事になってしまいます。
なので、売れる立地を同社のチェーン店を先に出店させておくことで、魚がかかる穴場を取られないようにしているのです。
これを、「ドミナント戦略」といって攻める地域を特定し、その特定した地域内に集中して店舗を出店することをいいます。
獲得することができる空間(地域)は有限であり、一旦専有した空間には他社が入り込めないというの大前提があります。
つまり、その限られた空間の中で、できるだけ多くの空間を自社で占めることができれば、売上や利益はその空間の広さに比例していくだろうという発想で、この新規参入阻止の効果がドミナント戦略の真骨頂なのだ。
さらに「ドミナント戦略」には他のメリットもあります。
一つは、物流コストの削減。店舗間の配送距離が短いので配送時間を短縮し、結果として物流コストの削減になるというもの。
二つ目のは、販促コストの削減。地域密着型であるコンビニエンスストアでは、出店時の地域調査にかかるコストや限定の広告が必要です。
ドミナント戦略では、地域に集中的に店舗開発をするの調査や広告費用をまとめて行えるメリットがあります。
また、「頻繁に目にする身近な存在」として認知されやすく、まわりの誰もが知っているという安心感や信頼性も向上させる効果もありそうです。
三つ目は、価格競争を回避できる。市場を独占し、ライバル店舗が少ない状態であれば、不必要な価格競争が発生することもなくなるので、結果的にも高い利益を上げることができる。
距離を離して出店するよりも、集中して出店した方が効率が上がり、そのエリアの顧客を独占することが可能となる。
しかし、ドミナント戦略はメリットばかりなのでしょうか?例えば、普通に考えて、真っ先に思いつくのが「共食い」。
物流コストや広告費用の効率化や、地域の知名度向上などメリットもあるが、
一方で、出店が集中しすぎたエリアにおいては顧客の奪い合い、つまり「共食い」リスクも考えられる。
本来であれば店舗と店舗の距離を広く取ったほうが、同一ブランド間での顧客の奪い合いが避けられるので、広い商圏を設定することができ、店舗単位の利益効率は高くなるはずなのです。
しかし、このドミナント戦略では、共食いが生じることをおそれず、店舗間の距離を近くに配置することによって地域を独占することに力を注ぎます。
既存店の位置は気にしない「最高立地」が優先
仮に一つのコンビニ店舗の1日の売上が「60万」だとする。そのすぐ隣に同じコンビニを立てた場合、1店舗当たりの売上は「40万」になるという。
つまり、2店合わせると「80万」。結果的に1店舗運営よりも売上は向上する。なぜこのような現象が起きているのか?
特殊な事例ではあるが、こんな事例もあります。例えば、隣同士になっているセブンイレブンでは、一方の店舗では、主に「生鮮食品」を取り扱い、隣の同じコンビニ店舗では、トイレットペーパーなどの紙製品、米、洗剤、フライパンなども扱っている。
要するに通常のスーパーで販売している物を多く扱うことで、隣り合う店との差別化を図っているのです。
隣接するコンビニの実態として、立地条件のいいオーナー店舗の近くに直営店をオープンさせ、オーナー店を乗っ取る??などと聞くこともある。
確かに直営店の儲けの大半がFC経営側になるためとされるが、コンビニ店舗の9割以上を運営するのはフランチャイズチェーン(FC)加盟店。
しかし、とてもじゃないがそんな理由で「ドミナントエリア」を制することは不可能だろう。実際、コンビニが隣り合わせで立ち並ぶ「ドミナント方式」に生じる「共食い」デメリットを実際はどうとらえているか?
強大な競争力を手にした、コンビニ最大手の「セブンイレブン」はこう明かしている。
既存店の位置は「気にしない」。
コンビニ出店候補地は、周辺の競合店の状況や人の流れなどをもとに、「本来はどこにあるべきか」という観点で選定する。
既存店とのバランスで考えるのではなく、「最高の立地」でチェーンの店舗が営業することが優先。影響を受ける既存店があれば、移転や販促などの支援を検討する。
そう言って、「既存店の位置にはこだわらない出店戦略」の一端を明かしている。巧みな戦略を思考するなかでも共存するこの強気の思想。「競合店に客が流れるということは、自店で満たせていないニーズがあるということ。」
「外部環境が全く変わらないことなどあり得ないのだから、独立事業主のオーナーも変化に対応すべく、たゆまず努力しなければならない」
しばしば「自社競合」が起きることに関して不満をぶつけるオーナーに、セブンの本部社員はそういった言葉で発奮を促すとされる。
「変化こそチャンス」セブン―イレブン・ジャパンの親会社、セブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長は、ことあるごとにそう語る。
その薫陶を受けた社員は、ビジネスパートナーである加盟店オーナーにも、そうした発想を求めているという。
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